今日の小話に出てくるゲームを、今時の若いお嬢さん方は知っているだろうか?
ルーレット状の指示盤をまわして4色のマルに手足を配置していくアレだ。
何年か前に地方のオモチャ屋さんで見かけたことはあるけれど、買われている形跡は無かった。
分からない人は検索してね。
危険なゲーム
本日の宴会場は彦根の部屋。いつもの4人が酒やつまみを持ち寄ってたむろしている。
「ほら、見て下さい!懐かしいでしょ?押入の奥から出てきたんですよ。」」
彦根が唐突に何か箱を掲げた。その蓋には男女4人が楽しそうに笑っている姿がある。
「お、ツイスターかぁ。確かに懐かしいな。」
「親戚で集まると、子供同士でやった覚えがあるなぁ。」
島津と田口が相づちを打つが、速水はあまり興味が無いようだ。
「ね、田口先輩、やりませんか?」
ここにいる全員がいい具合にほろ酔い気分だが、田口はそこまで酔狂じゃない。
「デカイ大人がやっても楽しくないだろ?」
「ああ、先輩ってこういうゲーム負けそうですよね。2、3手ですぐアウトになりそう。」
と彦根がさも有りなんと頷けば、島津も調子に乗って
「鈍くさいからなぁ、行灯は…」
とニヤニヤ笑う。
そこまで言われては田口だって面白くない。結局はささやかなプライドを賭けて彦根と対戦する羽目になった。
そんなやり取りを速水は『馬鹿らしい』と嘆息して聞き流し、手元の雑誌をめくった。
「お、この体勢キツッ…」
「バカ!こっちに寄るな!」
「だって、そこの赤が一番近いし」
「あっ!今俺の足蹴ったぞ!島津、反則行為だ!」
「あ~悪りぃ、見てなかった。…って、次右手を青だぞ、行灯。」
何だかんだ言いながらもゲームは白熱していた。
運動部所属の彦根は身体が柔らかいので、多少の無理が効く。そして意外…と言っては失礼だが、田口も運動不足の身体の割には善戦している。
「ほらほら腕が震えてるぜ、行灯クン。」
島津が楽しそうに野次るが、必死の田口から返答はない。
「ほら速水、見てみろよ。結構楽しい事になってるぜ?」
「……。」
無視を決め込んでいた速水に島津が水を向けた。その顔には人の悪そうな笑顔がある。
実は速水、横目でちらちらとゲームの行く末を気にしていたのだ。
今はまさにクライマックス。田口が尻餅を付くか、彦根が手を滑らせて潰れるのが早いか。
「……持久力の無い行灯の負けだな。」
速水は冷静に判断する。
『行灯が勝てば彦根の事だからもう一回やりたがるに違いない。これ以上の放置は許さねぇ。さっさと負けろ!』
…何のことはない。田口に放って置かれるのが嫌なだけだった。
「次、彦根。左足を青な。」
「え~と青、青は……っ、うわっ!」
ドスンッ!!
「はーい!彦根の負け~!」
「くっそ~、もうちょっとだったのに…」
「おいっ!どけ、重いっ!!」
「あ~、すみませ~ん♪」
「あ、彦根っ!てめぇっ…!!!」
バランスを崩し倒れ込んだ彦根は、見事に田口を押し倒していた。
抱きつくような形で、ご丁寧に田口の首筋に顔を埋めている。そんな際どい格好を速水が許すはずがない。
「とっととどきやがれ!行灯も大人しくのされてるなっ!
第一人の言うことをホイホイ聞いてんじゃねぇよ!」
いや、人の言うことを聞くゲームだからその要求は理不尽だ。
突然の剣幕に唖然とする田口を速水はさっさと捕獲して帰ってしまった。すごい早業だった。
プチ嵐の後に残された二人は苦笑しきりだ。
「…お前、わざとだろ?」
と島津が呆れて言えば、騒動の元凶は涼しげな顔で
「ご想像にお任せします。」
と嘯いた。
彦根は愉快犯(苦笑)
