さて、ようやく10000Hitのリク小説をUPするに至りました。お待たせしまくってお恥ずかしいです。
リク内容は!「一方的に行灯を好きすぎてなんだかキモイ将軍」との事でした。
キモイ速水……?どう書いたらいいんだろ?ヘタレはあったけどキモイって無かったな。
キモイかどうか、お題に沿ってるかどうかもさておき(え?)、Nさま、ご笑納していただければ幸いです。
では、以下からどうぞ。
拍手パチパチもたくさんありがとうございますw 感謝!
その男、心配性につき…
田口は3日ぶりに自宅へ帰った。
このところ仕事が立て込んでいたのと、遅くなるとつい面倒臭さが先に立ってつい帰りそびれてしまったのが実状だ。
アパートの廊下をのんびりと、帰ったらまず洗濯するかなどと暢気に歩いていた。そして自室の前に着いて鍵を開けようとした。
「…あれ?……開いて…る?」
ドアノブに触れたらロックがされていないのだ。
田口はちょっと考えた。
―――鍵、掛け忘れたのかな? それとも速水が来てんのか?
合鍵は預けてあるが後者はまず無い。明け方に救急車が来ていたのは知っているので、今頃速水は処置に追われているだろう。
可能性としては鍵の掛け忘れが一番だ。
「…参ったな、3日間も開けっ放しとは。」
物忘れってこういう風に始まるんだ、俺も年だな…と溜め息を盛大について田口は部屋に入った。
部屋には当然誰もいない。しかし……田口は唖然として中で立ち尽くした。
男の独り暮らし。そんなに綺麗にしている訳ではない。本だって積みっぱなしだし、洋服だって放りっぱなしの場合もある。しかし最低限、万年床の上のスペースは確保している…はずだった。
今、目の前の様子は惨状と言う部類に入るだろう。
積んであった本は倒れ、そんなに片付けていなかったデスクの上は更に酷く荒れ、第一万年床が見えないくらいにタンスの中の物がぶちまけられていた。
「……まるで…空き巣…みたいだな?」
いや、間違いなく空き巣だった。
人間、驚くと妙に冷静になってしまう場合がある。田口も例に漏れなかった。最近は事件に巻き込まれる事もしばしばなので、冷静に分析する。
もちろん警察は呼ばねばなるまい。でもその前に被害の程度を調べた方が良いのだろうか?しかし、自宅とはいえ勝手に現場をかき回して良いものか判断がつき兼ねる。犯人の物的証拠が落ちていることもあるだろう。
あれこれ迷ったが取りあえず110番通報をし、指示を仰ぐのが一番だった。
その2日後、速水が田口の元へすっ飛んで来た。
「おいっ、無事だったのかっ?!」
速水は愚痴外来に田口に抱きつく勢いで飛び込んだ。
「な、な、何っ!」
田口はちょうどソファから立ち上がったところだったが、速水の勢いに足がもつれて、もう一度ソファに沈むことになった。その田口の上に速水が馬乗りになった。
―――藤原さんがいなくてよかった…
と内心で安堵する。恋人は人目も気にせず突拍子もない行動に出るので気が気じゃない。
「大丈夫なんだな?怪我とか無いか?」
田口の身体をあちこちと撫で回す速水はひどく真剣な顔つきだ。
「…何の話だ?お前に心配されるような事は何も無いんだけど?」
「何言ってんだ?お前、強盗に遭ったんだろ?!」
「はぁっ?!」
「違うのか?」
田口が素っ頓狂な声を上げたので、速水は訝しげに顔をしかめた。
「俺んとこにたどり着いた噂じゃ、お前が家に帰ったところで強盗に出くわして危うく手込めになるところを近所の通報で駆けつけた警察に助けられたって……」
「何だ、そりゃ!全然間違ってるし、手込めとは何だよっ!!」
これじゃ噂ではなく嘘だ。どこをどう間違えばこんな話の展開になるのかさっぱり不明だ。いったいどれだけの人数で伝言ゲームが行われたのか、考えるだに恐ろしい。
田口はがっくりと肩を落としながら正しい事の次第を説明した。
「…じゃあ、お前は何ともないんだな?」
「遭ってもいない強盗じゃ何かあるはずもないだろうが…。」
田口は苦々しく言うが、速水は明らかにほっとしていた。彼は彼なりに心配してくれたのだろう。それがほんの少しだけ嬉しかった。
「被害は?」
「いや、それが特に無かったんだ。使ってたパソコンも型遅れだし、現金も置いてなかった。通帳類も盗られてなかったから良かったよ。」
通帳に関しては空き巣も探しきれなかったのではないか、と言うのが田口の印象だ。自分だってどこに置いたか忘れてたくらいだ。
「じゃあ下着類は?」
「……は?今、何て言った?」
田口は変な単語を聞いたような気がした。いや、聞き間違いかもしれないから速水を無闇に責めてはいけないと思った。
「悪い、もう一回言ってくれ。」
「だから下着だって。パンツの枚数とか減ってなかったか?」
「……。」
田口は絶句した。その顔を速水は真剣に見つめている。
―――この男は何を言ってるんだろう?脳が細菌にでも冒されてるんじゃないか?
と本気で心配になるくらい変な発言だ。
「…大丈夫か?お前、ものすごく疲れてんじゃないか?」
「? いや、さっき仮眠したし、このところは無理なシフトもないから普通だぞ?」
首を傾げて何でそんな事を聞くんだ、という風情だ。
「……なぁ速水、よく考えて見ろ。おっさんの俺のパンツを盗んで何が楽しいんだ?」
「だってお前のパンツなら俺がほし」
「ばっかじゃないかっ?!」
田口は思わず机を叩いて立ち上がってしまった。
「そんなモン欲しがるなんて変態だ!そんな変態野郎がお前の他にこの桜宮にいるって言うのか?!馬鹿も休み休み言え!」
「他の奴がやったら変態だが、俺は違うぞ!俺はお前が好きだから…」
「うるさい、下着が欲しいなんて言い出した時点で充分変態で変質者だ!」
「おまっ!恋人を変態呼ばわりするのかよ!」
「事実だろ。」
田口はどうにか自分を取り戻し、自分のデスクへと向かった。
「さっさと帰れよ。オレンジはそんなに暇じゃないだろ?俺もこれから書類を書くから。」
田口は渋面を作って速水に出て行くよう追い立てた。こうなっては頑固な田口にこれ以上は食い下がれず、速水は行儀悪く舌打ちをして立ち上がる。
「いいか、帰ったらタンスの中身、確認しろよ?」
「しつこい。」
田口は書類から顔も上げずに一言で切り捨てた。
その後しばらく速水はひどい心配性となった。
暇をひねり出しては田口の元へ顔を出し、病院の孤島である愚痴外来の周囲を散歩と称して見回って行く。帰る時は必ず携帯を握ってろとか、なるべく明るい所を歩けとか…。まるで女子供への注意だ。
『これじゃ、お前の方がストーカーじみてて気持ち悪い。』
と文句を言ったら、捨てられた犬のような悲しげな目をされてしまい……
田口はつくづく面倒くさい男だと溜め息をつくばかりだった。
愛ゆえの変態発言…
