マッサージ
「痛いっ!いたっ!…やめて下さい、先生っ!」
渡海が世良の頭を抱き込み、容赦なくこめかみ辺りをグリグリと押していた。
「何だよ、せっかく俺が『頭の良くなるツボ』を押してやってるのに。」
そう言いながら最高に楽しそうな笑顔で、更にグイグイと押す。
「そんなツボ、聞いたことありません!…いたっ!いい加減にして下さいよっ!!」
そう叫びながら世良は渡海の脇腹を指で撫で上げる。…実はソコを触られるのが渡海は弱い。ベッドの上で見つけた弱点で、やはり一瞬だけ腕の力が抜けて魔の手からようやく脱出できた。
「くっそ、汚ねぇ手つかいやがって…」
「悪ふざけも大概にして下さい。ここがどこだか分かってるでしょうが…」
「分かってるからやってるんだろ。」
渡海は鼻先で笑って、気が済んだのかふらりと去って行ってしまった。
「…残された俺の身にもなって欲しい。なんて言っても無駄だろうな。」
散々イタズラされたのはナースステーションのど真ん中。その場にいた看護師たちの注目の的で取り残された世良の居心地は最悪だ。きっと後で騒ぎを聞きつけた藤原あたりにこっぴどく叱られるのだろう…と溜め息を零す世良だった。
「先生、足裏マッサージやってみませんか?」
「何だ、アレを根に持ってんのかよ?執念深い男は嫌われるぜ。」
あのイタズラから1週間、世良は密かにリベンジを狙って痛いとウワサの足裏マッサージの本を読んでいた。
「先生みたいないい加減コトはしませんよ。にわか仕込みだけどちゃんと本を読んだんですから。」
そう言ってソファに寝転がる渡海の足首を掴んだ。
しばらく差し障りの無い部分を揉み、渡海も満更でもない気分らしい。ところが…
「っ!いって!!」
と思わず渡海が零した部分がある。世良は俯いてこっそりほくそ笑んだ。先日の仕返しとばかりに構わずグリグリと押してやった。
「お、いっ!何だ、そこっ!」
渡海に蹴られそうなので仕方なく一時中断した。
「今のは肝臓の反射区ですよ。明らかにお酒の飲み過ぎでしょうね。」
とにっこり笑いながら再度ぐいっと押してやると渡海は渋い顔で降参のポーズをして、形だけだが謝罪も引き出せた。
当初の目的を果たした世良は、今度は目や肩などいろいろな個所を押していく。そしてちょっとしたイタズラ心が沸いてくる。踵の中心辺りを念入りに押し始めた。
「世良ちゃん、そこは何だ?」
「ああ、ここは……生殖器ですって。」
「ほう……」
渡海の声が少し変わった。こちらもからかいを含んだ声だ。
「何だい、年寄りだから物足りないってか?」
今度は更に艶も混じって、世良は少しだけ息を飲んだ。
「せんせ……」
「俺が本気出したら、世良ちゃんなんて翌日干涸らびてるかもな。腰もアッチも立たなくなるほど抜いてやろうか?」
渡海がにんまりと、壮絶に色っぽく笑い……世良はうっかりとうずくまるハメになった。
最近、渡海先生の色気が脳内で爆発気味です。
