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愚痴外来の将軍×行灯推奨のSSブログです。たまに世良×渡海や天ジュノも登場。
No.
2025/07/07 (Mon) 05:47:41

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No.154
2010/12/27 (Mon) 22:15:16

今年最後のSSはやっぱり将軍行灯のバカップルにシメてもらいましょう!
ということで、4444キリリクSSになります。
頂いたお題がちょい長いです。
『学生時代に将軍が告白。そのあまりのしつこさに辟易して「20年後も同じことが言えたら付き合ってやる」とか言ってしまった行灯。→20年後に告白した将軍と、すっかりそれを忘れていた行灯の話。』
というリクエストでした。
もう、内容はそのまんまです(苦笑)。しかも、将軍ヘタレ仕様です;;

Aさま、ご希望に添えているとは思いますが…ご笑納頂ければ幸いです。

では、どうぞww

拍手[26回]



忘却のtime bomb


「俺の…俺の二十年を……返せ~~~っ!!!」

東城大学病院の西方浄土から、場所柄似つかわしくない雄叫びが轟いた。

西方浄土…愚痴外来の扉の前でそれを聞いた藤原看護師は持ち前の勘の良さでさっと身を翻し、乱暴に開かれた扉と中から飛び出して行った人物との激突を回避した。
「…あら、今のって……」
藤原が首を傾げながら部屋の中を覗くと、田口がぽかんとした顔で同じように首を傾げていた。
「先生、何があったんです?」
当然の問いに、田口の答えは歯切れの悪いものだった。
「いや…さっぱりです。速水の奴、訳の分からない事ばかり言って勝手に自爆していきまして…。」
田口の顔には迷惑と困惑がありありと浮かんでいる。本人に分からないものが藤原に分かるはずもなく、その場は結局謎のまま終わってしまった。

その一時間ほど後、一本の内線で事態は再び動き出す。
内線を取った藤原が「あら、お珍しいこと。」と一言漏らしてしまった相手は島津だった。
「どうした?お前がらみの懸案なんてあったっけ?」
と田口が代わると電話の向こうで大きな溜め息が聞こえた。
『…こんな日が本当に来るとは思っても見なかった。いや、思いたくなかったな。』
「は?何言ってんのかさっぱり分からないぞ?」
今日は速水といい、島津といい変なことを言う奴ばっかりだ、と頭の中が?で一杯になる。
『速水だよ。さっきまでここでさめざめと泣いてた。』
「はぁ?アイツは一体何なんだ?!こっちでも訳の分からない事を喚いて飛び出して行ったんだが……」
『お前さ、ちょっと時間あるか?話がある。』
「? 今日はもう診察は無いけど…」
『じゃあこっちに来いよ。速水の奇行の種明かしをしてやる。』
「あ?」
『お前は本当に忘れちまったんだなぁ…。』
島津はしみじみと呟いて通話を切った。田口は謎が増えるばかりだった。


MRI室で田口は島津の渋面に迎えられた。
「種明かしってなんだよ?」
「その前に聞くが、お前二十年前のこと、何か覚えてないか?」
「は?そんな昔の事…学生だったくらいしか覚えてないぞ。みんなですずめに入り浸って、バカやって……」
島津は何故か絶望的な顔になって、首を振った。
「じゃあ、速水がお前に迫りまくってたのは?」
田口はしばらく考えて「ああ…」と手を打って思い出して笑った。
「あった、あった、そんな事が。何を血迷ったんだかなぁ。しばらくしたら言わなくなったから、一時の気の迷いだったんだよな。」
「……俺は段々、速水が不憫になって来た。」
島津は目頭を押さえて悲観的だ。
「あいつがお前に迫らなくなったのは、お前自身のせいだぞ?」
「?」
田口は何を言われているのか分からない。

島津は厳かに確認した。
「行灯。お前、さっき速水に告白されたんだろ?付き合ってくれって。」
「!! 速水が言ったのか?!」
その問いは無視して島津は先を進める。
「それで、二十年前と同じ事言えたんだから約束を守れ、みたいな事言われただろ?」
「な、何でそこまで……」
田口は気味悪そうな顔で島津を見た。まったくその通りだったので若干たじろいだ。

「二十年後、同じことが言えたらお前と付き合ってやる。」

島津がまるで芝居の台詞を棒読みするように言った。
「………。」
「お前は二十年前、この言葉を速水に投げつけ、その場には俺も彦根も居合わせた。」
しばらくの間、MRI室に沈黙が落ちる。
田口は腕を組んで遠くを見ながら眉間にシワを寄せている。何かを思い出しかけているようで、しきりに腕を組み替えたり額に手をやって悩んでいる。
唐突に田口の動きが止まり、ゆっくりと島津の方へ視線が動いた。心なしか顔色が青い。
「ようやく思い出したか?」
田口が堅い表情のまま、黙てこくこくと頷いた。


遡ること二十年前のとある日、大学構内でのことだった。
「なぁ、行灯。週末空いてんだろ?映画のタダ券あるから付き合えよ。」
「うるさい。映画なら女の子誘えばいいだろ?お前なら、選り取りみどりだ。」
「俺は好きな奴と一緒に見たいんだ。」
「だーかーらっ!」
痺れを切らした田口の癇癪玉がついに破裂した。
「何で男の俺なんだっ!ふざけるにしたって度が過ぎる!からかうのもいい加減にしろっ!!」
「ふざけて男に告白なんか出来るかっ!俺はいつだって本気だぞ!」
速水も負けじと言い返し、二人は睨み合った。

速水が突然田口に「好きだ、付き合ってくれ」と告白したのは、つい一ヶ月ほど前の話だ。
田口は面食らい、側で聞いていた島津と彦根も耳を疑った。彦根なんか
「女の子じゃ物足りなくて、行き着いた先が田口先輩ですか…?」
と、先輩を敬う気持ちが欠片もない失礼な事を言っていた。そんな無礼千万の発言にも速水は、
「どうしても好きなんだからしょうがない。行灯でないと嫌だ。」
と言って今日までせっせと田口を口説いていた。

「俺はしつこいのは大嫌いだ!」
「でも、そうでもしないとお前は俺の本気を分かってくれないだろっ!」
真っ昼間の学校内で恥ずかしい。端から見れば立派な痴話喧嘩だ。
残念なことに居合わせてしまった島津と彦根は、きっちり三メートルの距離を取って巻き込まれないよう大人しくしていた。

「よし!じゃあ、しつこく迫らなければ付き合うのを考えてやってもいいぞ。」
「え!?」
田口の提案に速水の顔が喜色に輝き、オブザーバーの二人はぎょっとした。

「明日から、一切この手の話は無しだ。そうだな…二十年後、同じことが言えたらお前と付き合ってやる。」

速水と距離を置いたオブザーバーは三人同時に「え~っ!!!」と雄叫んだ。
「嫌ならそれでも構わない。お前との付き合いも今日ここまでだ。」
頑固な田口のことだから、きっとその通りにするだろう。速水は歯軋りをしそうなくらい、全身に力が入っている。多分ジレンマだろう。
しばらく膠着状態が続き、それを破ったのは速水の方だった。落ち着くようにひとつ深呼吸をした。
「…分かった、二十年後だな?男に二言は無いな?」
「ああ。」
真剣な速水に対し、田口も短く返事をした。
「よし、分かった。おい、お前達、証人な!」
と、速水は離れた場所で驚きを隠しきれない二人を容赦なく巻き込んだ。

以来二十年、速水は田口に対して色めいた事は何一つ言わず、親友としてのポジションを築き上げてきたのだった。


「……あの時は、とにかく速水の鬱陶しい言動を何とかしたい一心だった。」
思い出した田口は半ば放心状態で語る。
「端で聞いてた俺だって、まさか本気だとは思わなかった。ところで何で二十年だったんだ?」
「分からない。多分…口から出任せだ……と思う。」
「うわぁ…お前、最悪だな。」
島津は額を押さえて天を仰いだ。
「速水はなぁ、さっき『行灯が俺の純情を踏みにじった』って、そりゃもう落ち込んでな。」
あまりの出来事に田口は表情筋が固まって引きつっていた。この歳になって純情もへったくれも無いと思うが、まさか二十年もそんな想いを抱えられてるとは思いもしなかった。
そこに島津がとどめを刺すように言った。
「これで約束を履行しなかったら、あいつ立ち直れないぞ。最悪は…過労死するまで働き続けそうだな。」
……笑えない。まったく笑えない冗談だ。
タダでさえワーカーホリックの気があるのに、これが死ぬ気で働き始めたら過労死は必然だ。
「……ど、どうしよう。」
田口の声が若干震えている。まさかの出来事に気が動転して、言葉も思考もまとまらない。
「残念だが、元はと言えばお前自身が蒔いた種だ。自分で何とかしろよ?」
島津だってこれ以上の面倒は見きれないのが正直なところだから、
「ま、よく考えて早いとこ会いに行ってやれ。」
と言うのが精一杯だった。


その日は仕事にならなかった。診察が無かったのは不幸中の幸いだ。
一応勤務中であるから書類の山とは格闘してみるが、身が入らないのは同じ部屋にいる藤原にもバレバレだった。
「先生、お悩みのようならいっそ書類に手をつけない方がよろしいんじゃない?間違って後で直す方が骨ですよ。」
と言われた先から、書き込みのミスに気付いて大きな溜め息を吐いた。

田口は本館の屋上に逃げ出した。抜けるような青空が爽やかすぎて心に痛い。
二十年前に自分で蒔いた種…と言うより、今となっては時限爆弾と言った方がいいだろう。
仕掛けた本人がすっかり忘れ、爆発に驚いているのだからお粗末な話だ。自分は戯れ言のつもりだったのに、速水はそうは取らなかった。
真剣に二十年もの間、田口だけを想っていた事は誰も責められない。非があるのは完全に田口の方だった。

あれから二十年。
もしあんな中途半端な事は言わず、きっぱりと速水に引導を渡していたら今、こんな事にはならなかった。
速水だってもっと他の恋愛を楽しめたはずだ。あの男振りなのだから、今頃は素敵な女性と結婚して子供の一人や二人くらいいたかもしれない。
―――自分はその可能性を奪ってしまったのか?
そう思うと愕然とした。


田口は修羅場に出くわさないよう祈りながら、オレンジ救命センターへと向かった。
幸い恐れていた事は起こらず、無事に目的地付近までたどり着くとオレンジナンバー2の佐藤と師長の花房が困り顔で話をしていた。
「おや、田口先生がこちらにいらっしゃるなんて珍しいですね。」
田口に気付いた佐藤がとっさに笑顔で挨拶をし、その横で花房も小さく会釈した。田口も挨拶を返すと速水の所在を尋ねた。しかし二人は顔を見合わせて困惑してしまった。
「どうかしましたか?」
田口は非常に嫌な予感がした。先ほどまで島津のところでどん底に落ちていた速水が、そう簡単に浮上するはずがない。
「実は…部長が部屋に鍵掛けて出て来ないんです。」
―――うわぁ……
田口は内心やっちまったと焦った。
「さっき本館から戻ってから部屋に籠もられてしまって。今のところは支障は無いのですが……」
花房師長の困惑と心配も尤もな事だ。ここは速水を中心に世界が回っているのだから、主軸が止まってしまったら機能が停止してしまう。
田口は思い切って部長室のドアをノックした。
「おい、速水!俺だ。あけてくれ!」
何度かの呼びかけの後、部屋のロックが外される音がした。三人が恐る恐る中を覗くと……

立派な回転椅子に、体育座りで丸くなって顔を伏せている速水が目に飛び込んで来た。

「「「………。」」」
見てはいけないモノを見てしまった気がして、三人はそっとドアを閉めた。
この場を納められるのは自分しかいない、と言うの自覚はあるので田口は自分に任せてくれないかと二人に申し出た。
「元はと言えば…まあ、私との意見の相違なんです。なので説得してみせますから。」
詳しい内容なんてとても明らかに出来ない。語弊はあるが嘘でもないと自分自身に言い訳をして、二人を部屋から遠ざけてもう一度部屋に入った。
念のため鍵を掛けて、速水の側まで歩み寄った。

「速水…」
「……。」
「あの、わ、悪かった…。その……すっかり忘れてたんだ。」
田口が素直に謝罪すると速水が小さく身動ぎした。
「まさか…さ、あんな」
「お前は俺を弄んだんだ……」
「そんなつもりは」
「俺はお前との約束を二十年間守って来たのに…」
「うっ……」
返す言葉が一つもない。圧倒的に田口が不利であり、弁解の余地は無かった。

顔を伏せ、身体を椅子の上で丸めたまま速水が揺れると、回転椅子が左右に振れる。
「俺はさ、ずっとお前だけ好きだった。そりゃ途中で仕方なく付き合った女もいたけど、ひと月だって保たなかった。」
田口は学生時代を振り返り、確かにそうだったと思い返す。周囲からは取っ替え引っ替え、選り取りみどりで羨ましいなんて言われていたが、それは本意ではなかったと思い知らせれる。と同時に、罪悪感がひしひしと突き刺さった。
「それなのにお前はさ…」
「分かったから。とにかく顔を上げてくれよ。まともに話が出来ないだろ?」
田口が宥める口調で言うと、速水の揺れが止まる。
「行灯…」
速水には似合わない心細げな声で呼ばれ、田口はどきりとした。
そして見上げた速水は…

これまた寂しげな瞳の色。
まるで捨てられた子犬のような悲しげな、一縷の望みを託すような必死の瞳。

田口は不覚にもキュンとしてしまった。

「なぁ、行灯。約束だよな?俺と付き合えよ。」
縋る瞳と伸ばされる手。その手が田口の腕を掴んだ。
「は、速水…」
学生の頃とは違う大人の色気を無意識に含ませて迫る速水に、田口はたじろいだ。触れられた部分に熱が籠もり、それは全身に広がる。
「お前はその気じゃなかったとしても、俺はずっと待ってたんだぞ?少しぐらい報われたって罰は当たらないはずだ。」
そんな事をそんな目顔で言われたら、田口は拒否なんて出来なかった。

きっと…あの時、速水にすっぱりと断りを入れていたとしても、この男はずっと独り身だっただろう。
―――こんなに一途に想われていたなんて、ある意味幸せなのかもしれない。
田口はそう思った。速水の熱に当てられたのかもしれないが、でも目の前で自分に求愛する速水が愛おしいと感じたのは確かだった。
幸か不幸か田口も独り身。恋愛は自由だ。
田口は座る速水の頭を胸に抱き込んだ。
「あん、どん?」
「…いいよ、速水。ずいぶんと待たせて悪かった。」
「……。」
「二十年分の俺を…全部やるから。過去だけじゃなく、これから先も持って行け。」
「本当に?」
「ああ、今度こそ二言は無い。」
田口はきっぱりと潔く言い切った。



「あの時のお前は男前だったなぁ。惚れ直したぞ。」
速水はニヤニヤしながら隣でうつ伏せになっている田口の頭を撫でた。
「……うるさい。」
田口は羞恥を怒った口調で誤魔化し顔を枕に埋めた。

あの告白劇から三ヶ月。無事に収まるところに収まった二人は、今ではベッドを共にするような仲だ。
速水は元からベタ惚れだったが、田口は速水の懇願に絆されたような形だった。しかし今は速水の事を大事に想い、あの二十年前なんで断ってしまったのかと不思議な気持ちになる時すらあった。

「好きだよ…行灯」
「こんな時にそのあだ名で呼ぶなよ。」
田口が不満げに言えば、速水は律儀に言い直す。
「じゃあ…好きだ。田口、愛してるよ。」
速水はふてくされた恋人を仰向けに転がし、ベッドへと縫い止める。田口も抵抗もせずにされるがままに求めに応じ、不機嫌な仮面を取り去った。

二人は二十年のブランクを少しでも早く埋めるよう、愛し合った。
つまりは……
最強の重症バカップルがここに誕生したのだった。
 


今回も島津はまんまと巻き込まれてます。もうこれは体質としか言いようがない!
将軍行灯がバカップルなのも体質なんだ!体質なら仕方ないよね☆
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