これもちょっと早いけど冬至小ネタ。
明日からがあまりパソを弄れないんですよ~;;
出掛けたり、旦那が仕事で使ったりで。SSは予約機能とかでUP出来るけど、お返事などはちょっと遅れそうです。
拍手パチパチ、いつもありがとうございますw
では以下から小ネタです。
一陽来復
今日の業務も無事に終わり、本日は残業する事もなく帰宅準備を始める。すると藤原からかぼちゃの煮物を渡された。小さなタッパには一回食べきり分ほどが入っている。
田口は何故だか分からなかった。
「今日は冬至よ、先生。」
「あ…ああ、そうか。」
男の独り暮らしになって長いと、こういった時節のことに疎くなる。
「先生に風邪なんてひかれてしまっては困りますからね。おまじないでもしないよりはマシでしょ?」
と藤原は笑っている。田口は彼女の気遣いを有り難く頂戴することにした。
帰り道、薬局の前を通るとふと目に付いたものがあった。
―――これなら使い切りだからいいか。
と手に取ったのは柚子の香りの入浴剤。良い具合にタブレット型のがバラ売りしていた。
会計を済ませたその後、メールを一通投げた。
「ああ、今日は平和だったな。」
速水がそう言いながら田口の部屋に来たのは午後10時くらい。今日は急患も少なく、満床のICUも落ち着いているので三日振りにオレンジから解放された。
「期待はしてなかったんだがな。」
帰りがけに田口が投げたメールは速水宛てだった。もし早めに帰れるようならウチに寄らないかと誘ったのだ。今夜はいつも激務の恋人を、冬至に託けて労ってやろうかと思っていた。
「バーカ。お前に誘われて俺が断るとでも思ってんのかよ?」
とからりと笑いながら部屋へ上がった。
「ん?」
速水の鼻がひくついた。何か香りがする。柑橘系の爽やかな……
田口を見ると部屋着だが、髪が少し濡れているところを見ると風呂上がりらしい。速水の横を通った田口からもそれは漂う。
「行灯?」
台所に立つ田口に寄り添い鼻を寄せた。
「…何か良い香りがする。」
「ああ、今日は柚子湯にしたんだ。ほら冬至だろ?」
「わざわざ柚子、買ったのか?」
「いや、手抜きの入浴剤だ。それと…ほら、コレ一口食え。」
田口はそう言って、もらったかぼちゃの煮物をひと欠片、速水の口に突っ込んだ。
「藤原さんのお手製だぞ。きっと霊験あらたかだ。」
「……うん、美味い。冬至かぁ……こんなのすっかりご無沙汰だったな。」
「俺も藤原さんに言われて気付いた。独り身の男なんてそんなもんだろ?」
そう言って肩を竦めた。
冬至にかぼちゃを食べて柚子湯に入れば風邪も引かずに息災に過ごせる、と言うのは有名な話。
「でもそれだけじゃないらしいな。さっきちょっと調べてみたら、冬至って一番日が短いだろ?で、翌日からまた日が長くなる事から、一度弱まった太陽の光が復活するってお目出たい日なんだとさ。」
「へぇ…」
「『一陽来復(いちようらいふく)』って言って、冬至を境にみんな運気が上昇するんだって。」
「そりゃスゴイな。でも全員無条件で上がったら、有難味が薄れるな。」
「こら、伝承でもお目出たい話なんだからケチつけんなよ。」
田口は現実的な事を言う恋人の額にデコピンを食らわせた。
「さて…じゃあ、俺も冬至の御利益に与ろうか。」
そう言って速水は田口を抱きしめて耳元で囁いた。
「かぼちゃも食ったことだし、次は……」
―――柚子の香りのお前に入ってから、柚子湯に入るとするか。
行灯にも入れば、将軍様は心身共に元気いっぱい!(主に下半身/殴)お地蔵様の御利益で無病息災、イケイケですからw