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愚痴外来の将軍×行灯推奨のSSブログです。たまに世良×渡海や天ジュノも登場。
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No.395
2014/08/24 (Sun) 10:30:53

久しぶりにおチビを書きました。
3人と言うより3匹に近いかもしれません(笑)。
個性丸出しの3チビ。でもそれが一つになるとそれぞれ個性が相殺されて意外と曖昧になって、行灯みたいになるのかなぁ…なんて勝手に思ってます。

今回はデレ田口がやらかしてます。
イロモノOKな方は続きからどうぞ。



拍手[8回]



リトルパニック チビ田口の大冒険


どうやら田口の縮小分裂化は本人のストレスの度合いに比例しているらしい。
今日も終業間際に速水が田口の所に行ったら、藤原さんが困った顔で出てきた。
「ずっと普通にお話してたんですよ?それでもうすぐ終業だからコーヒーの器具を洗おうと流しに立った隙に…」
「戻ったらまた小さくなっていた、と」
「ええ…」
今ソファの上ではいつもの三人の小さな田口がそれぞれくつろいでいる。
「最近は先生もいろいろとお忙しいみたいで。でもここに来る患者さんは心理的に待った無しの人もいるから丁寧な診察が必要だし」
「また無理難題でも押しつけられたんですかね?」
「何日か前に呼び出されてから多分……先生は便利屋じゃないのに、ったくゴンスケの奴」
最後の一言は聞かなかったことにしようと速水は心の耳栓をした。
「ま、今夜も俺はオレンジですから預かりますよ。一晩経てば元に戻るでしょうから」
速水は仕方なさそうな口振りだが、内心は不謹慎とは思いながらもかなり楽しみなのだ。
小さくなった田口はそれは可愛い。もちろん普通の田口の事だって好きだし愛しているが、小さくなった姿はまた別腹だ。それぞれが直情で裏表のない行動がとても微笑ましく、愛おしい。常在戦場の速水にとっては癒しだった。
「私が家に連れて帰るわけにも行きませんものねぇ。でもこの状況が長引くようなら院長に相談しないと…」
藤原さんはすこしだけ嘆息し、速水にチビ田口達を託して帰宅した。

「さて…」
速水は楽しげに三人を見下ろした。ツンの田口はまたかとでも言いたげな顔で明らかに困り顔だ。このチビが一番オリジナルの田口に近い性格だ。ふわふわ(寝汚い)チビ田口はどんな状況でも意外と動じず、これもまたオリジナルに通じる。しかし
「はやみ~!」
満面の笑みで甘えてくるチビ…デレ田口は普段からは想像出来ないくらいの甘えたで寂しがり屋。決してオリジナルではあり得ないほどに積極的に速水に甘えスキンシップを好んでいる。これもまた田口の隠された本心なのかと思うと本当に愛おしい。普段がまったく甘えないからここぞとばかりに速水は甘やかす。
「よう、久しぶりだな」
そう声を掛けて指先で小さな顔を突いてやると嬉しそうに笑った。
「じゃあ行くか。今夜は俺のところでお泊まりだ」
そう言って速水は一人ずつ白衣のポケットに入れて、うきうきしながら根城へと帰って行った。

しかし甘い時間はそう簡単には過ごせそうになかった。部長室に戻ってしばらくはチビ達を構って心穏やかだったが、唐突に鳴り響く緊急コールに一気に速水の気持ちは現実に戻る。
「バイパスにて事故発生!」
速水はやおら立ち上がり、救命医の厳しい顔になる。ところがその袖口を小さく引くのは…意外な事にツンの田口だった。表情は硬いが生真面目な視線で速水を見上げ、ひとつ頷いた。その横でふわふわ田口が緊迫感にはそぐわない柔らかい笑顔を速水に向ける。更にデレ田口が「はやみ、がんばって!」と笑顔で手を振っている。
速水は一瞬緊急時という事を忘れて微笑んでしまった。
「おう、行って来る。」
田口達に応援されれば元気も希望も百倍千倍の速水だ。最強無敵な気分で部屋を出ると一気に慌ただしくなったICUに身を投じた。

速水が出ていってからどれほどの時間が経っただろうか。チビ田口達は主のいない部屋でそれぞれに待っていた。ふわふわ田口はすでにソファの片隅で船を漕いでいる。ツン田口は落ち着いて行儀よく座っているが、デレ田口はそわそわしてあちこち動き回っていた。多分寂しさを紛らわせているのだろう。
そんな時、唐突にノック響きガチャリとドアが開いた。
「部長、いますか?」
速水を探して部屋を覗いたのは佐藤だ。チビ達(ふわふわを除く)は一瞬ビクリとしたが幸い佐藤には気付かれなかった。
「あれ?ここじゃないのか」
当てが外れてドアを閉めようとした時、廊下の向こうから速水の声が聞こえて来た。
「はやみ!」
デレ田口がすぐさま反応したが、これも幸い佐藤の耳には入らなかった。ツン田口が慌ててデレを引っ張り物陰に隠れた。
「あ、部長!まだ緊急搬送があるみたいです」
「受けろ。俺の勘じゃもうひと山ありそうだ」
そんな会話が聞こえドアが閉じた。ツン田口はほっと胸をなで下ろしたが、デレの方は待ちくたびれたところに速水の声を聞いてしまった為、寂しさが更に募ってしまった。
「はやみ……」
一言呟いてドアの方を見れば閉まったはずのドアが僅かに開いている。デレ田口は唐突にドアに向かって走り出し、ツンが止める間もなく外へと飛び出してしまった。後を追おうと慌てて駆けだしたが、運悪くドアの手前でつまずき転び…
パタン……
転んで触れたドアが閉まった。
「!!!」
本来こんなチビが触れたくらいでは動くはずもないのに…極め付きの運の悪さにツン田口は呆然とするしかなかった。

廊下へ飛び出したデレ田口は慌ただしく歩く人の足並みに一瞬怯み振り返ったが、ドアはすでに閉じていた。ここでじっとしていればやがては速水が帰って来て気付いてくれるはずだ。しかし今は速水に会いたい気持ちが勝っていて、意を決して壁際を慎重に歩き始める。
「はやみ…どこだろ……」
だんだんと心細くなる一方で、周囲の喧噪と足並みが激しくなる。そしてまた緊急連絡が大音声で流れ、それと同時に騒がしくなってデレ田口は身動きが取れなくなり、廊下の隅で立ちすくむしかなかった。

それから間もなく患者を乗せたストレッチャーが勢いよくやって来た。周りを医師と看護師が取り囲みあれこれとせわしなく指示を出しながらデレ田口の目の前を通り過ぎて行く。するとはらりと何かが目の前に落ちた。
血まみれのガーゼだ。出血の処置をしながら移動したので弾みで落ちてしまったらしい。
大きさはせいぜい手のひら大のガーゼ。しかし今の田口の大きさでは自分の身長に匹敵する巨大ガーゼで、しかも大の苦手な血にまみれている。
デレ田口はひっ!と息を飲み血の匂いまで吸い込んで…そのまま廊下の片隅で失神した。


「あー、疲れた」
速水がすべての処置をひと通り終えて部長室へと戻って来た。するとすぐさまチビ田口の一人が速水のズボンの裾を引っ張った。
「ん?お前は…ツンの方か。どうした、珍しい」
そう言って摘み上げると足をばたつかせながら必死の形相でドアの方を指さす。異変を感じた速水はまず部屋を見回した。一人はソファに寝転がっていて、あの寝相からするとふわふわ田口と思われた。そして一人は手元にいる。
「…あれ……まさか…」
速水が戻るといつも一番に飛びついてくるはずのが…
「まさかあいつ一人で出たのか?!」
速水の叫びに手元の田口が真剣に頷いた。
チビな田口が先ほどまで人の行き交う修羅場の足下をうろうろしてたのか?!そんな事は全員が思ってもみないから足下になんて特別注意も払わない。
「やばい!」
速水はとっさにツン田口を握りしめたまま部屋を飛びだした。

「どこだ、一体…」
足下をきょろきょろと見ても、焦りのあまりいつもの勘も鈍っているようで見当たらない。すると捕まれていたツン田口が再び暴れ出す。どうやら降ろせということらしい。
「そうか、お前の視点ならすぐに見つけられるな」
速水がすぐさまツン田口を放すと、彼は低い視点をくるりと見回して一瞬止まった。すると搬送口の方へと走り出し、速水はその後を着いて行った。
ものの数メートルも行くと速水の視界に赤い何かが落ちているのが見えた。
「なんだありゃ?」
ツン田口もその手前で止まってものすごく嫌な顔をしていて、そのすぐ脇を指さしていた。
そこには仰向けで大の字に倒れているデレ田口がいたのだった。
速水は大きな溜め息をついてそこにしゃがみ込むと赤い物体が何なのか理解した。
「…本当に……困ったもんだ。血嫌いなのもすばしっこいのも」
大きく嘆息して倒れているデレ田口を回収するが、こんなマヌケな姿では本気で怒る気もしなかった。


この後気付いたデレ田口が目の前にいる速水の手に抱き着いてわんわんと大泣きし、それを満更でもない気持ちで甘やかしてしまうのは仕方ない事…なのだろうか?


おしまい
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首都圏に棲む主腐…もとい主婦。家庭内における肩身の狭い『隠れ同人』。
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