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愚痴外来の将軍×行灯推奨のSSブログです。たまに世良×渡海や天ジュノも登場。
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2025/07/07 (Mon) 12:29:21

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No.91
2010/10/13 (Wed) 13:57:31

明日はまた実家の片付けで1日いないので、本日UPします。

大変長らくお待たせしました!……待っててくれたかな?
350HitリクのSSです。
Hさまからのお題は『些細な事で嫉妬から最後は甘々』でした。時代設定については特に無かったので、学生時代の二人に登場してもらいました。
自分なりに頑張ったつもり;; ご笑納頂ければ幸いです。

毎度のことですが、タイトルで悩みました。
『ジェラシー』ってほどカッコ良くないので、可愛らしく『ヤキモチ』に収まりましたw

では、以下からどうぞww

あ、キリ番、キリリクも再開しましたのでヨロシクです~。

拍手[6回]


ヤキモチ狂騒曲


人は恋をした瞬間から幸せな感情を得るのとは裏腹に、厄介な感情まで背負い込む事になる。
得体の知れない焦燥感や猜疑心、そして嫉妬。
恋心には負の感情が付き物だという事を思い知るのである。


学校帰りに田口は本屋に立ち寄った。
店先で新刊本をチェックして雑誌コーナーを流し、何となく文庫本の方へと足を向けた。
すると…奥の方に数人の客に混じって速水がいた。
声を掛けようかと思っていたら、速水の隣で本を選んでいた女性が書棚に手を伸ばした。
しかし彼女が取りたい本は棚の上段にあって、背伸びをしても僅かに手が届かない。

それを見かねた速水が声を掛けたようだ。女性も急に話しかけられて驚いたみたいだが、速水の親切が解ると書名を告げたらしい。
長身の速水が目的の本を楽々と手にして渡すと、彼女は速水を見上げて少し頬を赤らめながら頭を下げて、速水もそれに笑顔で応えた。

一部始終を離れて見ていた田口は、何となく声を掛けそびれて店から出てしまった。
『速水が女の人に優しいのはいつもの事じゃないか。』
そう、自分だってあの立場なら同じ事をしたと思う。
『そりゃ…俺たちは特別な関係だけどさ、あれくらい男なら誰だってやってあげるよな。』
基本、女性には優しく接するものだろう。そう考えれば別に速水の行動は責められるものではない。

田口は本屋での一連を受け流して帰路についた。
……心に小さな棘を残したまま。



ある日、速水は校内で田口を見かけた。
呼び止めようとしたが、連れがいることに気付ききっかけを失った。
それは速水の知らない顔の男だった。
『あんな奴、いたか?』
二人は肩を並べて談笑してるようだ。

背は田口より高く、痩せているようだがひ弱な感じには見えない。
笑顔が爽やかで…引きこもり系の田口とは正反対のタイプなので、奇妙な取り合わせだと速水は感じた。
二人が方向を変えてこちらの方へ向かって来たので、速水はとっさに隠れてしまった。なぜそんな事をしたのかは分からない。ただ自然と身体が動いてしまった。
物陰から覗くと田口の表情は見えなかったが、男の方が機嫌よく話しかけているところを見ると田口も迷惑ではないらしい。

二人は突き当たりの廊下で別れた。
その時に男がさりげなく田口の肩を叩いて行ったのが、速水の心に残った。

速水は何だか田口を追う気にはなれず、そのままきびすを返した。
『まぁ…いくら友達が少なそうだからって言っても、アイツにだって俺の知らない付き合いがあるよな。』
自分たちは恋人関係ではあるが、すべてを知ってる訳じゃない。未だに意外な事に驚かされたりすることだってある。
『アイツだって俺の交友関係を全部知ってる訳じゃないし。』
お互いそこまでストーカーじみた真似はしない。

速水は気分を取り直して歩く。
小さく波立つ心に気付かないフリをして…。



そしてその日の午後、いつもの面子で麻雀の最中の事……
「速水先輩、薬学部の女の子に告られたでしょ?」
彦根がそんな話を持ち出した。速水が沈黙を決め込んだので、取りあえず島津が合いの手を入れてやった。
「何でそんな事知ってんだ?」
「その子、友達の彼女の友達なんです。」
「ややこしい言い方だな。」
「でもそうとしか言いようがないですよ。」
彦根も島津も惰性の会話になっている。そう、こんなことは日常茶飯事なのでどうでもいい事なのだ。

『速水がモテるのなんていつもの事だ…』
田口もそう思いながら手元の牌を眺めるが集中出来ない。
どんな子だったのだろう… 諦めてくれるのだろうか…
可愛い子なら、速水も少しくらい心が動いたかもしれない…
俺は…どうしてこんなに不安になるんだろう?
気付けば終局でやり込められて、大敗していた。

「悪いけど、先に帰る。」
田口が急に席を立って帰ってしまった。一度負けたくらいでへそを曲げるような性格でないのは解っているので、残された三人は首を傾げた。
「お前たち…喧嘩でもしたのか?」
島津が渋面を作り、彦根に怪訝な顔をされても速水はまったく心当たりがない。
「お前があんな話を振るから悪いんだ。」
速水が彦根を睨むが、心外だと反論された。
「第一、あんな話はいつもの事じゃないですか。」
確かにその手の話は田口だって知っている。この面子で話題にのぼるのも一度や二度じゃない。
「まぁ…アイツも虫の居所の悪い日だってあるだろうさ。」
と島津が簡単にまとめて、その日はお開きになった。


「おい、行灯!」
速水はその足で田口の下宿を急襲したが、生憎と留守だったのでその場で待つ事にした。

確かに薬学部の子に告白はされた。しかしその場できちんと断っている。今自分には好きな人がいるから付き合えない、とはっきりと言った。
その事を田口に伝えたかった。別に機嫌を取る訳じゃないけれど、何となく言っておきたかった。

しばらくすると男の話し声が聞こえてきた。
通りを見ると田口と…またあの男が一緒に歩いていた。速水の中で、得体の知れない感情が沸き上がり首の後ろ辺りがチリチリと嫌な感じがする。
今度は田口も気付いて、先ほどの事が少し気まずいのか「よう…」と曖昧な呼びかけをした。
相手も速水に目線だけで挨拶して、「じゃあ、またな。」と言い残して去って行った。

「…アイツ、誰だ?」
田口が待っていた速水を部屋に入れると、開口一番がそれだった。
その口調が思ったよりも刺々しかったのに田口は驚いたが、それよりも速水自身が自分の声音に驚いていた。
「高校の同級生だよ。ここは一応俺の地元だからな。同じ大学に入る奴がいたっておかしくないだろ?」
「今まで会わなかっただろ?」
「ついこの前偶然学食で会ったんだ。学部が違うとなかなか会わないもんだな。今日も正門でたまたま会ったんだよ。」
「……んだよ、それ。」
自分の知らないところで、知らない男と仲良く会っていたなんて速水にとって初耳だった。
「もうアイツと会うなよ。」
速水が思わず言ってしまうと、その一言に田口はカチンときた。
「何でお前にそんな事言われなきゃいけないんだ?!」
「あの野郎、お前狙いだぜ!この前だって学校で別れ際にさりげなくお前に触って…」
「おまっ…!そんなの見てたのか?!」
「見られたらマズかったのかよ?」
「バカッ、そんなんじゃない!第一、同級生に会ったくらいで何でお前に責められなくちゃいけないんだよ?!」

―――違う、責めたかったんじゃない。こんな話をするのにここに来た訳じゃない!
速水は内心でそうは思っていても、出てくる言葉は感情が先走って思い通りにならない。……最悪だ。

「そういうお前だって…いまだに女の子に告られてるじゃないか。」
「はぁっ?!」
「本屋でだって女の人にお礼言われて満更でもなさそうな顔して笑ってただろ?」
速水は一瞬唖然としたが、最近本屋に行った事を思い出した。
「あ…何だ、あん時いたのかよ!あれくらい別に大した事じゃないだろうが!ってか、声くらい掛けてくれてもいいだろ?!」
「…そうだよな。お前にとってはそんなのは日常茶飯事だ。」
田口も自分の言っている事が支離滅裂なのは解っている。
しかし売り言葉に買い言葉。勝手に言葉がこぼれ出す。


「何だよ、こっちの気も知らないでっ!俺は嫌だったんだよっ!」
田口は言葉を叩きつけた。
「はっ!その言葉、そっくりそのまま返してやるよっ!!」
速水も負けじと声を荒げて応じた。


ここまで来て叫んだ言葉で、二人はハッと顔を見合わせた。急に言葉が止まってしまった。
まさか…… いや、多分…… きっと……


「「お前…妬いてたのかっ?!」」


二人同時に叫んでしまった。
「…。」
「……。」
沈黙がいたたまれない。お互い振りかざした拳をどこへ落とせばいいのか解らなくなったようだ。
今までのモヤモヤとした気持ちが嫉妬心だったなんて…。
冷静に振り返れば思い当たるところはいくらでもあった。だから尚更気まずかった。

田口はまさかあの程度の事で、速水が嫉妬するなんて考えても見なかった。
速水は、普段から感情をあまり露わにしない田口がこんなにはっきりと嫉妬を表した事に驚いた。
「…お前が嫉妬するなんて……思わなかった。」
速水が呆然とつぶやけば、
「お前こそ…」
と田口が言葉少なに驚く。

だんまりだったが、お互いに見合った唖然とした顔が何だかおかしくなって来て…
とうとう同時に吹き出してしまった。
「お、まえ…すげーアホ面…!」
「そっち、だって…間抜け顔だよ!男前が台無しだ!」

笑って、笑って、笑い転げて……
そうしたら、今までのモヤモヤした気持ちは不思議なくらい霧散してしまった。
速水は田口の手を取って引き寄せた。
「薬学部の子はちゃんと断ったから。好きな奴がいるから付き合えないって。」
「…そうか。」
田口はそのまま速水に寄りかかって肩口に頭を乗せた。
「だからもう妬くなよ?」
「お前こそ…あいつはただの同級生なんだから、変な勘違いすんなよ。」
「分かったよ。」
そう言って速水が田口の額にキスをしたら、田口の顔が真っ赤になった。
「何だよ、これくらいで赤くなるなんて可愛いなぁ。」
「可愛いって言うなっ!」
「だってこんな事よりもっとスゴイ事してんだろ?」
と笑う顔にほんのりと色気が混ざって、田口は顔を背けるしか出来なかった。


『分かったよ』とは言ったものの、速水は田口の言い分には懐疑的だった。
―――違う学部の奴がそんな頻繁に学内で、しかもさぼり魔の田口を捕まえる事が出来るもんか。
最初は偶然だったにしても、その後は怪しいもんだと速水は踏んでいた。
後日、田口がまた例の男と話しているところに遭遇した。速水はすかさず現場に自然に和やかに割り込み、さりげなく田口の肩をこれ見よがしに抱いた。
すると…
男の顔が一瞬悔しそうに歪んだ。速水はそれを見逃さず、そっとほくそ笑んでやった。
もちろんこの水面下のやり取りを田口は気付いてなんていない。



人は恋をした瞬間から幸せな感情を得るのとは裏腹に、厄介な感情まで背負い込む事になる。
でも…それとどうやって付き合うかは、自分の心次第。
そして互いの想いの深さ次第だ。
 


若い頃はつまらないことで怒ったり笑ったりするもんです。それが通用するのも若さの特権。
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