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愚痴外来の将軍×行灯推奨のSSブログです。たまに世良×渡海や天ジュノも登場。
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2025/07/07 (Mon) 01:50:31

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No.351
2012/11/19 (Mon) 22:17:38

カテゴリー『一発芸』が復活しました(笑)。
今日のは絶対に一発しか書けないネタなんですから。

某所で渡海と天城が出会ったら…と言う妄想が大爆発しました。
捻くれ方や世良ちゃんの可愛がり方も似てるから、意外と気が合うかもしれない、なんて思っちゃったワケです。
でも桜宮サーガ内では絶対に出会えない二人。
でもどうしても並べて見たい! とっても垂涎モノだと思うんですよ。(多分マニアックだけど)

パラレルならいくらでも捏造できる。しかし…出来れば原作ベースで書きたい。
そう思ったら…思いついたのが渡海センセの死にネタでした。

はい、注意です!今回はR18じゃないけど要注意です。
本日更新のSSは死にネタです。二次創作を始めてから、なんと初めて書く死にネタです。
なので、そういうのが嫌い・苦手な方、読んで後悔しちゃうかも…なんて思った方は以下に進まないようお願いします。

ドン☆と来い!で覚悟の出来た方はお進み下さい。

拍手[7回]





楽園


―――しまった!
と思った時には爆風に吹き飛ばされ、次の瞬間激しい衝撃に意識が飛んだ。

渡海が腹の傷を押さえながらふらふらとたどり着いたのは、あの緑剥樹の下だった。
どさりと身を投げ出すように大樹に寄りかかり、そのままずるずると崩れ落ちるように座り込んだ。
「…あー、ヤバイ‥な……」
傷は思った以上に深く、たぶん内蔵も傷ついているだろう。出血もおびただしいが止血の術は無い。絶対に手術が必要な傷だと判断したが…ここには自分以外はろくな医者はいないし、医療設備も無い。NPOの医師団に駆け込むにはもう手遅れだと自己診断した。
「…参った、な。」
渡海が死の覚悟を決めると不思議と心は穏やかだった。肩の無駄な力を抜いて全身を大樹に委ねると、周囲の喧噪が遠くに聞こえて身体が楽になった。
「…酒……飲みてぇな。」
こんな気分の時は酒を呷るに限る。

「ったく。こんな飲んだくれの小汚い男のどこがいいんだか。ジュノは趣味が悪かったんだな。」
突然聞こえたのは久しく耳にしていない母国語だった。
「…ずいぶんと聞き捨てならねぇ言葉だな。」
「ああ、失礼。正直者なのでつい、ね。」
目の前に現れた男は長身で黒い衣装。よく見ればこの戦地には似つかわしくない涼しい美貌が呆れた表情をしていた。
「…あんた誰だ?黒づくめって事は死神か何かか?」
「馬鹿な。悪魔を迎えに来る死神がどこにいる?」
悪魔…とは懐かしい呼ばれ方だ。渡海は思わずふっと笑ってしまった。
「…君が渡海、だね?渡海征司郎。東城大医学部のオペ室の悪魔。」
「…人の名前を聞くなら自分から言うのが礼儀だろ?」
「ああ、そうだった。私は天城。君が去ってから二年後にムッシュ佐伯によって大学に招聘された。」
「へぇ…佐伯のじいさんがね。元気だったかい?」
「少なくとも私がいた時はね。私もあそこにいたのは一年ほどだったから…」
天城の口調に僅かな苦みと哀しみが混じったが、渡海はそれには触れなかった。誰にだって触れられたくない部分はあるのだ。
「ところであんたは…」
渡海は言いよどんだ。こんな所に突如として現れた日本人なんてとても現実とは思えない。
「お察しの通り、私はすでに死んでいる。病院を辞めた後、海外で事故死だ。」
「ふうん…俺も似たようなもんだ。もう助からないからな。」
「そうだな。その傷で今も生きているのが不思議なくらいだ。さすがに悪魔はなかなかしぶとい。」
亡霊の天城が笑うと渡海も苦笑するしかなかった。

「で、ジュノってのは誰だい?俺の知り合いにそんなのいたか?」
最初の言葉が気になって天城に尋ねると、懐かしそうな顔になった。
「…世良の事だよ。」
「……。」
「忘れた訳じゃないだろう?」
「…ああ、覚えてるさ。――世良ちゃん、か。懐かしい。」
渡海も天城もそれぞれに世良との思い出が脳裏によぎる。自分たちには眩しいほどに純粋で真っ直ぐだった青年。
「あいつ、どうしてるかな。良い医者になったかねぇ。」
「私が病院を去った後すぐに彼も病院を辞めて…私のいるモナコまで追いかけて来た。」
「へぇ…」
「しかし彼が到着する直前に私は死んでしまったからね。結局会えず終いだった。」
「そう、か…」
「……愛していたよ。ジュノ…世良の事を。」
柔らかく笑う天城の顔を、渡海は黙って見つめていた。
「君だって世良の事を愛おしく思っていただろ?」
「…ああ、そうだな。可愛くて…情に絆されちまったよ。」
死の間際で何も嘘を吐くことはないと思い、正直な気持ちを吐露した。
「先生、先生って子犬みたいに着いてまわるのが可愛くてさ。いつの間にか深みにはまっちまった。」
ほろ苦くはあるが、しかしそれは決して悪い気分ではなかった。
「ジュノはやっぱり忠犬か!」
天城は楽しそうに声を上げて笑う。…よく喋り笑う亡霊だ。
「私にもそうだったよ。しつけ甲斐のある、やんちゃで可愛い子だった。」
「…あんたが言うと何だかいやらしく聞こえるぞ?」
「もちろん、そういう意味を含めてさ。」
「あんた…世良ちゃんを喰ったのか?」
「そう言う自分は喰われたくせに。」
「………。」
二人は黙って見つめ合ったが、ついには互いに吹き出して笑ってしまった。
「あー、まさか人生の最後に世良ちゃんを肴にこんなに笑えるとは思わなかったぜ!」
「笑って人生の幕が閉じられるなら、苦しむよりは良いだろう?」
「まあな。」
渡海はすっと立ち上がった。
「あ、れ?」
自分は重傷で、立ち上がるどころか虫の息だったはずだ。そして妙に身体が軽い。
―――そう、か。もう……
側に立つ天城の笑顔もひどく優しかった。
「さて、俺もそっちに行くか。」
「ふむ…ずいぶんと印象が違うな。やっぱりジュノは面食いか。」
天城がぶつぶつ言うのを聞いて自分の手を見てみると、荒んだ生活の跡は見当たらない。もしかしたら世良の事を思い出して、あの頃の自分に戻っているのかもしれないが、自分の顔は見えないので定かではない。
「なぁ…あんた、もしかして俺を迎えに来たのか?」
渡海が素朴な疑問をぶつけてみると、天城は少し困ったように微笑んだ。
「…彼岸でジュノの話をしながら彼を待つのもいいじゃないか?」
「のろけ話はごめんだぜ?」
「それは私だって同じだ。」
初対面なのに妙に気が合う。会話のテンポもだが、どうやら同じ方向にひねくれているらしい。
「そう言えば、その胸の星は何だ?」
「私はモンテカルロのエトワールだからね。」
「何だ、そりゃ?」
渡海が訝しげな顔になると天城は仕方ないと言う顔をして肩を竦めた。
「長い話になりそうだ。」
「いいじゃねぇか。どうせ時間なんてたっぷりあるんだ。」
「…そうだな。慌てることはない。」
どうやら向こうでも楽しく過ごせそうだと渡海は思った。

二人は歩き始める。しかし場違いな異邦人達を目にする者はいない。

「世良ちゃんはからかい甲斐があったな。」
「ははっ、そうだな。でも純粋で一途だった。」
「で、時々大胆な事をしでかして、失敗すれば青くなって…」
「それでも這い上がる根性はあったな。」
「ああ、食らいつくしつこさは見上げた根性だった。」
二人は世良の思い出話を楽しげに話しながら歩き続けて……ゆっくりと消えた。

―――じゃあな…いい男になれよ。




緑剥樹の下、笑顔のまま一人の男が…死んだ。


 


渡海&天城が好きすぎて…暴発しました。

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首都圏に棲む主腐…もとい主婦。家庭内における肩身の狭い『隠れ同人』。
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