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愚痴外来の将軍×行灯推奨のSSブログです。たまに世良×渡海や天ジュノも登場。
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2025/07/07 (Mon) 12:55:55

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No.138
2010/12/10 (Fri) 11:21:28

本日はSさまよりリクを頂戴した『学生時代で渡海先生絡みの将軍行灯』をお送りします。

ワタクシ、渡海センセーも好きなのでうっかりセンセー寄りの感じに仕上がってます;;
しかも季節外れの真夏(爆)!
だって出会ってるのって夏ですもんねぇ。これは仕方ない。

『行灯←渡海』か『行灯+渡海』的な感じですが、最後に将軍登場でどうにかリク内容はクリア……かな?(汗)
このままご笑納いただければ幸いです。


拍手パチパチ、ありがとうございます!!
7000のキリ番申告もありがとうございましたvv
お返事などは、時間があったら二度目日記に書きますね。

では、リクSSは以下からどうぞww

拍手[22回]



あの緑陰の下で…(将軍行灯←渡海)


中庭の大樹の下、渡海は珍しくも外で夏の日差しを避けてベンチにだらしなく腰掛けていた。
日差しさえ避ければ、真夏でも木陰は快適だ。それでも中庭でくつろぐ人は殆どいないが、行き交う人々も多少はいた。
「ん?あれは…」
渡海が何気なく周囲を見ていると、同じく木陰で入院患者とおぼしき老人が白衣の若者と話をしているところだった。
それを興味深く見ていると、老人がポケットから何かを取り出し若者に渡そうとした。若者の方は固辞しているようだったが、結局は押し切られて頭を下げていた。
そのやり取りが何だかおかしくて、渡海は笑いをこぼしてしまった。

「よう、卒倒少年。何をもらったんだ?」
老人とやり取りをしていたのは、先日の手術の見学中に血を浴びて気絶した学生の田口だった。
「…渡海先生。」
非常に不本意な呼ばれ方だが、事実だったので仕方ない。田口は悔しいが、一応学生として先生に礼をとった。
「お前、今の患者から何もらったんだ?」
きっと答えるまで解放してくれないだろうと田口は諦めた。
「…お菓子です。これをもらいました。」
ポケットに突っ込んだクッキーの小さな包みを渡海に差し出した。
「話を聞いてあげたら、愚痴を聞かせたお詫びだって…」
「ふうん…」
聞いておきながらつまらなさそうな返答をする渡海に、田口は少しだけ反感を持つ。

反感を覚えたのは今が初めてではない。あのムンテラの時からだ。
反感…と言うのはちょっと違うかもしれない。
理屈は分かっているけれど、感情が先行してしまう…まるで子供の反抗期のような感情に近い。
渡海からしてみれば青臭い理想論を言う学生など歯牙にも掛からない存在だろう、と田口は内心思っていた。

「お前さぁ、この前病院のロビーでも子供に懐かれてただろ?」
「えっ?」
確かにそんな事もあった。混雑するロビーで親とはぐれてしまって泣きそうな子供をたまたま保護してしまったのだ。その子は親が迎えに来るまで田口の手を離さなかった。
「…そんなの、見てたんですか?」
「まぁな、たまたまだ。お前は子供や年寄りに好かれるのか?」
「それこそ、たまたまです。」
図星だったが、悔しいのでそう言い返せば
「可愛い女の子じゃなくて残念だな。」
と言って笑われた。

まぁ座れよ、と柔らかく言われると田口は渋々隣に腰掛けた。
「お前はとことん内科医向きだな。」
「まぁ…血が生理的に苦手だと分かりましたから。」
「それが確認出来ただけでも実習の価値はあったな。」
完全にからかわれている。田口は早くもここに座ったことを後悔した。
その気持ちがありありと表情に出てしまったらしく、渡海に
「俺が嫌いか?」
と聞かれてしまい口ごもった。渡海は苦笑しながら足を組み替える。
「俺はお前の事、嫌いじゃない。」
「え?」
田口は信じられないとばかりに目を見張って驚いた。絶対に呆れられて、見放されていると思っていたから。
「そりゃ血を見てひっくり返るヘタレだが、俺のムンテラにケチをつけるくらいだからな。少なくともただのヘタレじゃない。」
「……。」
誉められてるのか貶されてるのか分からない。
「その上、学生のくせに俺を睨み付けて自分の意見をはっきり言うんだからな。その気概はなかなかなモンだ。」
礼を言うべきなのか、田口は迷った。
「気概は立派だ。意見も正しい。しかし…お前の理想はまだまだ青い。そして俺の考えと交わる事は無いだろうな。」
「……仕方ない事だと思います。」
「ん?」
「人が十人いれば十通り、百人いれば百通りの考え方があると思います。先生と僕は多分…一番遠いところに位置してる。」
「……。」
二人は暫く黙っていた。

大樹の木陰で並ぶ二人を静寂が包む。
交わることの無い二人が、今だけはその空気を共有する不思議な空間。
まるで世界からそこだけ切り取られたような空間だった。

「っ、くっくっ…」
急に渡海が低く笑いだしたので、田口は驚いた。
「ったく、お前は面白いな。興味が尽きないよ。」
「な、何ですか?いきなり…。」
この先生は唐突過ぎる、と面食らってまた言葉に詰まってしまった。
「ああ、そう言えば。一緒に実習に来てた奴…えらい男前がいただろ?」
「速水ですか?」
「アイツは良い目をしてる。完全に外科医向きだな。堂々として姿勢も良いが何かやってんのか?」
「剣道部です。」
「ふうん、なるほどね。なかなか良い体格だ。」
「ええ、綺麗な筋肉の付き方してますよ。」
「へぇ…」
渡海も田口も何気ない会話の流れだった。しかし、最後の渡海の一言のニュアンスを深読みし過ぎた田口は顔を赤らめてしまい、それを見た渡海はちょっと首を傾げた。
「ア、アイツはよく家に泊まりに来るし‥その、風呂も入って…だから……」
必要以上に狼狽して、言わなくてもいい言い訳を並べてしまって田口は墓穴を掘って行く。
「おいおい、別に何にも言ってないだろ?何か疚しい事でもあるのか?」
「あ、ありませんっ!」
強い否定は、裏返せば肯定に繋がる。渡海は「そうか、そうか。」と言いながらニヤニヤしている。絶対に田口の言い分を信じていない。

「おーい、田口!」
中庭の向こう側から突然呼び声が聞こえ、二人は揃ってその方向を見ると話題の人物がこちらに走って来た。
「は、速水!」
「あ…渡海先生、お話中すみません。ちょっと用事があるのでコイツ、連れてっていいですか?」
「ああ、構わねぇよ。俺もそろそろ戻るからな。」
そう言って、田口よりも早く席を立った。
その時、渡海にイタズラ心が沸き上がる。
「じゃあな、卒倒少年。もし血が苦手なのを克服したら、外科に来いよ。俺が直々に手取り足取り仕込んでやる。」
「絶対、嫌です!」
「ははっ、そう言うなよ。お前はヘタレでも良い医者になる見込みがあるんだから。」

渡海はあえて速水を無視して…田口の頬をそっと撫でた。
棘のある言葉とは裏腹な優しい手付きだった。
その突然の行動に、速水は一瞬目を見張った。が、すぐに渡海を睨み付けた。もちろんそんな反応は想定済みなので痛くも痒くもない。
渡海は二人を残して中庭の遊歩道をゆらゆらと歩いて行ってしまった。
田口は座ったまま呆然と、速水は唇を噛んで睨んだままその後ろ姿を見送った。

「ふうん…なるほどね。」
渡海はささやかなイタズラが成功して、少しだけ機嫌が良い。
後ろの様子をそっと伺うと、速水は田口の両肩に手を置き必死に何か問いかけているようだ。
「若いねぇ。」
ちょっとした刺激にも反応する、渡海から見れば幼いとも言える恋人達が平和で微笑ましかった。



これは渡海が大学病院で過ごした最後の夏の、ほんの小さな思い出。
近い将来と遠い未来に大事件が待ちかまえているなんて思いもしなかった、真夏の僅かな時間の出来事だった。
 


渡海先生は、気に入ってる子ほど苛めたりからかったりするタイプだと思います☆
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首都圏に棲む主腐…もとい主婦。家庭内における肩身の狭い『隠れ同人』。
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