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愚痴外来の将軍×行灯推奨のSSブログです。たまに世良×渡海や天ジュノも登場。
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2025/07/07 (Mon) 07:21:26

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No.50
2010/08/19 (Thu) 19:01:00

え~、カテゴリーの表示を変えました。
小話内容を分かり易くするため、CPで表示にしましたので。

そして今日は大盤振る舞い!世良渡海の小話もアップしますよ~!
今、世良渡海が熱いぜ☆
本当は明日以降にしようかと思ったけれど、旦那がいるもんでパソでおおっぴらにホモ小説を紐解くことができません。

ちょっと世良ちゃんが乙女チック入ってますが…
渡海センセー、セリフがありませんが……;;
世良→渡海ですが………


よろしかったらご賞味下さい。

拍手[6回]


切ないくらい恋をしよう


渡海が病院を去って半年が過ぎようとしていた。
世良は相変わらず雑用に追われる目まぐるしい日々だ。
その一方で高階からの指導を受け、僅かずつだが着実にスキルアップはしていた。

外科控え室の前を通る時、まだ少しだけ胸が痛む。
―――あの人はどうしているだろう…。
そう思うと資料の束を握る手に力が入る。
彼の名をここで聞かなくなって久しい。誰もが名を呼ぶのも思い出すのもはばかっているようで、世良は悲しみと共に僅かな怒りも感じる。
何者にも束縛されず、自分の信念を貫き通した人だった。皮肉屋でいいかげんでもあったけれど、時折見せる優しさと語る真実が世良の心に響いた。

―――渡海先生……

彼の人の名前を思うだけで、世良の心は揺れた。
そう…あれは確か、残暑もようやく終わり涼風が立ち始めた頃の事だ。




症例カンファレンスのための資料作りで、世良は足りない項目に気付き急いで作成しなければならなかった。
ところがそれには専門の学術書が必要だった。
「渡海先生のところにないかなぁ。」
あの部屋には高価な専門書が山ほどある。あそこに行けば大概のことは調べられるのを世良は知っていた。
他の研修医はまず渡海には近付かない。彼の根城の外科控え室にも滅多に足を向けない。そんなところに平気な顔で近付き、図々しくも書物を借りようなんて事が出来るのは世良くらいなものだった。


実は渡海に対する世良の心情は複雑だった。
ただの尊敬なら、師の後ろ姿を一歩引いて見ていれば良い。
しかし渡海に対しては一歩踏み込みたくなる。もっと彼の事が知りたくてたまらなくなる。
無論医者としての渡海にも教えを請いたいが、渡海個人のことも知りたいのだ。今までに出会ったことのないタイプの大人で興味が尽きない。
そして背徳的な魅力があった。
確固たる信念を持ちながら、光と闇の境界を行くような姿から目が離せない。
世良のような前途ある若者の心にも、ささやかながらも暗の部分はあるものだ。渡海の存在は世良のそんな心の陰を揺さぶった。

控え室のドアをノックするが、返事はない。
「あれ?いないのかな?」
ドアノブに手をかけると鍵は掛かっていない。おそるおそる中を覗くとソファから長い足がはみ出している。
「なんだ、いるじゃ…」
と言いかけて言葉を切ったのは、渡海が眠っていたから。
クッションに頭を預け、手足をソファから投げ出して無防備に寝顔を晒していた。
今年の夏は酷暑だった。最近になってようやく残暑も一段落して過ごしやすくなった分、夏の疲れが出ているのだろう。渡海は世良の気配にも気付かず、ぐっすりと寝入っていた。

端正な顔立ちだと思う。時折みせる憂いのある表情にどきりとする。
口は悪いしいい加減な面も多々あるけれど、些細な優しさが嬉しい。それを感じ取れる人はかなり少ないけれど…。
しばらく渡海の寝顔に見入ってしまった世良は、我に返ると慌てて資料用の本を探し始める。
静かに、そっと、渡海を起こさないように……

何冊かを選び終えると、机の上のメモ紙を一枚取り本を借りて行く旨を書いておいた。
それをそっとソファ向かいのテーブルに置く。
渡海はまだ眠ったままだ。世良はもう一度、小声だが呼んでみる。
「渡海…先生?」
ぴくりともしないのが何となくおかしくて、無防備な寝顔が不意に愛おしく感じられた。


そしてゆっくりと顔を近づけ…彼の唇に僅かに掠めるだけのキスを落とした。


世良が離れても渡海は目覚めない。よほど深く寝入っているらしい。本当はもう一度キスしたかったが、きっと目覚めてしまうだろう。
そうしたら渡海は怒り呆れて、世良を切り捨てるだろう。それをいとも簡単にやってのけてしまうのが渡海なのだ。
世良は名残惜しそうに渡海の側を離れ、ドアの音を殺しながら廊下へと出た。
壁に背を預け、本を抱きしめて大きく息を吐いた。


「そっか…俺……好きなんだ、渡海先生が……」


そう、それは確かに恋だった。
刹那の瞬間に永遠の恋に落ちてしまった。

結局その後は何事も無かった。
幸か不幸かキスしたことも知られていないらしく、態度も相変わらずなので、世良は拍子抜けしたような、ほっとような気分だ。
そして目まぐるしい日々に揉まれているうちに事件が起こり……
渡海はあっけなく世良の目の前から去ってしまった。




あれから半年。途切れてしまった想いの糸を未だに手放せないでいる自分がいる。
でも、手放さないでいればいつかあの人に逢えると信じていた。
どこにいても、どんなに見違えていてもきっと逢えると信じて邁進するしかない。
りっぱな外科医になれと言ったあの人に恥じない医師になって再会するために。


「待っていて下さい、渡海先生。俺…会いに行きますから。」
 


世良ちゃんの決意表明。乙女入ってるけど、将来はいい男になって渡海センセーを迎えに行くんです!
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首都圏に棲む主腐…もとい主婦。家庭内における肩身の狭い『隠れ同人』。
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