身体を温めて大人しくしてます…
先日の夕方、散歩をしてましたら子供達のハロウィン行列に出くわしました。
近所の子供英会話教室行事らしい。
魔女や獣耳は分かるけど…シンデレラみたいなお姫様はどうかと思った。
まぁ子供のことだからね、目くじら立てるほどの事じゃないし(笑)
そんなこんなで、こそっと書いていたハロウィンネタを投下しておきます。
なんかやっつけ仕事みたいでゴメンナサイなんですが……;;
やはり行事には乗っておきたかった。 無理矢理甘い;;
旦那は仕事に出てるから…これをアップしたらちょっと休もう。
拍手パチパチ、ありがとうございますww
ハッピー・ハロウィン
「あ~んどんw Trick or treat!」
謳うような口調で深夜近くの愚痴外来にやって来たのはもちろん速水だ。
「何だよ、ハロウィンは子供の行事だろ。」
「ああ、まったくだ。今日は2階のガキどもに手持ちのチュッパを根こそぎやられた。」
「子供は怖いモノ知らずだな。ジェネラルに追いはぎ行為とは。」
田口はその時の様子を想像して苦笑してしまう。
入院中の子供達は制限が多くて楽しみも少ないから、たまにはお祭り騒ぎでガス抜きも必要だろう。
「だから、疲れた俺に糖分をよこせ。」
ソファにふんぞり返って俺様状態の速水を見ると、『コイツも子供みたいなもんだな』と田口は内心で笑った。
「ほら、これ食えよ。」
田口は棚から様々なお菓子の詰まった箱を取り出し、速水の前に置いた。
「さすが、お地蔵様のお供えはバリエーションが豊富だな。医局にだってこんなには無いぞ。」
と感心と呆れが半々な感想だ。
速水がふと田口のデスクを見ると、そこにはカボチャの置物。
「何だ、お前だってハロウィンの飾り置いてあるじゃねぇか。」
「ああ、今朝小児科の子がくれたんだよ。アレ、本物のランプなんだ。」
いわゆる『ジャックオランタン』だ。よく見ると陶器で、中にはロウソクが入っている。
子供からの贈り物だから微笑ましいのに、田口の顔は微妙だった。聞けばその理由は…
「お前が俺のことを行灯て呼ぶから。行灯という物が昔のランプみたいな物だと大人から聞いて俺にピッタリだからだってさ。」
速水は大爆笑だ。あだ名の由来を知ったらさぞ幻滅することだろう。
「ったく…お前や島津が処構わず昔のあだ名で呼ぶもんだから、子供達にまで知れたじゃないか。」
情けないやら恥ずかしいやらだ、と文句を並べる田口だった。
互いに当直だから、田口は眠気覚ましのコーヒーを濃いめに入れて速水に差し出す。
「お前、菓子食わないのか?」
そう言えば自分から強請っておいて、速水は菓子に手を付けてない。
「……。」
「速水?」
「…本当はイタズラしたかった。」
「は?」
速水の子供じみた発言に田口は目が点になった。
「はぁ…そうだよな、ここは菓子が潤沢だったのを忘れてた。失敗したなぁ…家ならイタズラし放題だったのに。」
本当に悔しそうに速水が言うので、田口は今度こそ呆れ返ってしまった。
本当に子供みたいな男だ。
なのにこんなお祭り行事のセリフを真面目に取って。
それが可笑しいような、可愛らしいような……
田口が急に立ち上がって、デスクの引き出しを物色し始めた。
「どうした?」
「ああ…あった。」
田口が取り出したのは安物のライター。以前この部屋に誰かが忘れていった物だ。
そしてジャックオランタンの蓋を開けてロウソクに火を灯す。それをソファ前のテーブルにセットすると部屋の電気を落とした。
真っ暗な部屋に小さなランタンの明かりがひとつ。
「おもちゃのランタンじゃさすがに暗いな。」
そう言いながら、田口は速水の隣にすわった。
「速水…Trick or treat」
「え?」
速水がきょとんとしているのは暗がりでもわかる。
「菓子を寄越さないとイタズラするぞ?」
「おまっ…!」
慌てる速水が面白くて、田口は笑い声をたててしまう。
「菓子は?」
「…無いな。さっき言った通り、在庫ゼロだ。」
「じゃあイタズラ決定。」
そう言うが早いが、田口は速水の膝にころんと頭を乗せた。つまり膝枕だ。
「お前忙しいから…30分だけな。」
「……ハイハイ」
速水は溜め息混じりに頷き、大人しく膝を提供した。
「これじゃ、イタズラじゃなくて拷問だな。」
速水が苦々しく呟くと、急に手を取られて…指先を甘噛みされた。
「おい…」
「バカだなぁ。」
少しだけ笑いの入った田口の声が聞こえるが、どんな顔で言っているのかは暗くて分からない。
速水は甘噛みされた指で、そっと田口の唇をなぞった。
ロウソクの灯りが消えるまで、あとどれくらいだろう?