通って下さっている皆様、ありがとうございます!!
せっかくの1000Hitなのに何も出来ないのが残念ですが、ちょっとバタバタなのでお許し下さい;;
その代わり…にもならないかもしれないけれど、小ネタをひとつ投下しておきます。
22日は十五夜、だけど満月は昨日でした。なので、ベタですがお月様ネタで。
明るくも、暗くもないという微妙さ……;;
月は好きな題材のひとつ。四季を織り込むのも好きですが、なかなか生かせませんね。
昨日の東京は涼しいを通り越して寒いくらい。更には大雨;; 満月どころじゃありません。
でも桜宮は晴天てことで(笑)
そして今日も涼しすぎです。慌てて長袖のTシャツを出しましたよ。寒暖の差がヒドイです。
なんかのイジメですか?みたいな。年と共にこういうのは身体にいけません。
スパークの頃の気温はどうなんだろう?今の時期は毎年、着る物に困ります。
拍手パチパチもありがとうございますww 励まされます!
月光
田口は深夜にふと目を覚ました。
抱きしめられていたはずの腕がなく、どうしたものかと眠い目を凝らすと速水は窓辺に座っていた。
窓の外には丸い月が浮かんでいた。
月明かりに照らされる速水の横顔は静謐だ。
病院で見せる熱い緊張感は影を潜め、落ち着き払った年相応の大人の男の横顔。
この男は太陽の輝きも月の儚さも似合う。
生命の陰陽を常に間近に感じている証だろうか……
「どうした?」
「ああ…月が明るくてな。」
「そういえば、今日は満月だったっけ。」
「そうだったか?」
そう言って速水はもう一度天空を見上げた。
「…綺麗なもんだな。」
「ああ。」
田口も布団から出て窓の外を覗いた。
「あ、そういえば……」
田口は台所に行き、冷蔵庫から目的のモノを取り出すとグラスを持って速水の元へ戻る。
「コレ、飲むか?」
差し出したのは冷酒の小瓶。銘柄はよく知らない酒だ。
「貰いモノでさ。美味いかどうか分からないけど、月見酒も良いだろ?」
酒の封を切り、グラスに注いで速水に渡すと香りを嗅いで一口含んだ。
「…なかなか美味いな。」
「あ、ホントだ。」
二人は並んでグラスを傾けながら、暫く黙って虫の音を聞きながら贅沢な月見酒と洒落込んだ。
「あ…何か急に思い出した。」
田口が月を見上げながら呟いた。
「何だよ?」
「アレだよ、『ロミオとジュリエット』」
「はぁ?」
速水は突拍子もない発言に戸惑った。それを見て田口はバツが悪そうに小さく笑った。
「月と何か関係あったか?」
「ほら、二人が愛を誓う有名なバルコニーのシーンの台詞でさ『私は誓おう…あの月に賭けて』ってロミオが言うと、ジュリエットが『いけません。夜毎形を変える不実な月にあなたへの愛を誓うなど…』って答えるヤツ。」
なぜこんな事を思い出したのか、田口にも分からなかった。
恋人と二人、同じ月の下にいたからなのか。それとも月光が自分を惑わせたのか。
どちらにしても、大の大人がずいぶんとロマンチックな事を思い出したものだと気恥ずかしく思った。
「何だ、誓って欲しいのか?」
速水の言葉に驚いて彼の顔を見ると、意外にも真剣な眼差しとぶつかった。
一瞬跳ね上がった心臓を宥めつつ、田口は小さな笑いを作り首を振った。
「バカな…そんなの小説だから格好が付くんだ。」
と受け流した。
すると、速水は田口の腕を取って引き寄せた。
「お前のここと…」
速水が田口の心臓のあたりを拳で軽く突く。
「俺のここに」
自らの胸も拳で突く。
「……誓ってやるよ。お前への想いを、な。」
月明かりの下、速水が壮絶なほど綺麗に笑った。
冗談だろ、とは言えなかった。
速水の瞳があまりにも真っ直ぐで、でも怖いくらいの光を湛えていて…
今までに感じたことのない不思議な感覚。
『月の魔力』
ふとそんな言葉を田口は思いだした。
満月の夜の逸話は多い。地球に恩恵をもたらし、自然界の営みを操り…人の精神までをも惑わせるらしい。
すべてが真実とは信じがたいが、この美しさの前では納得させられてしまう。
田口は今夜はそんな逸話を素直に受け入れても構わない思った。
速水と二人、月光に狂わされても悪くはない…と。