気分転換にほっこり系のお話を書きたくて、チビ行灯の番外を書きました。
短いけど、ビジュアルを妄想するだけでちょっとニマニマしてます。
拍手も連日ありがとうございますw
おやすみ ~Little Panic 番外
速水が部長室に戻ったのは明け方の4時近くだった。
大型トラックの横転による多重事故。オレンジにかつぎ込まれた負傷者達にはもちろん全力を尽くし、ようやく処置が終わったところだった。
ガチャリと部屋の扉を開ければ、当然静かだった。
「ま、この時間じゃ起きちゃいないよな。」
速水はひとり呟いた。
この部屋には昨晩からチビ田口たちが泊まっている。緊急のコールが掛かったのが日付が変わった直後くらいで、その時はまだ3人とも起きていたが、さすがに寝静まっているようだ。
速水はひどく疲れているが、田口たちの寝顔が見たかった。それが今、最高の癒しなのだ。みんなそれぞれ可愛らしくて、速水はメロメロだ。
即席で設えた段ボールの簡易ベッドの中を見るが誰もいない。多分速水が出た後、それぞれ気ままに過ごしそのまま寝オチしたのだろう。速水は病室のモニターに注意しながら3人を捜索する。
1人目は簡単に見つかった。デスクの上で、文庫本の開いたページの上で行き倒れのように眠っている。これはツン田口だ。上手い体勢で寝ていたので、本に挟まれていなかったのは幸いだ。
速水はそっと持ち上げると、即席ベッドへ寝かせてやった。もちろんおやすみのキスを額に落として…。
2人目の田口はちょっと見つけるのが厄介だった。出掛けに脱ぎ捨てて行った白衣の中で眠っていたのだ。その白衣をぎゅっと握りしめながら。たぶんこれはデレの田口。こいつは人一倍寂しがり屋で甘えたがり。速水の残り香のする白衣にすり寄っている内に、そのまま寝てしまったのだろう。
これも白衣の中から起こさないように取り出すと、ベッドへと運んでやる。寝心地が変わってムニャムニャと寝言を零す。
「はぁ…やみぃ……」
そう言いながら寝心地の良い体勢を探しゴソゴソすると、また眠りについた。
その一連の様子を見ていた速水。鼻の下が伸びきって、百年の恋も冷めるほどのだらしない顔になっていた事は誰も知らない。
「…さて、最後のは更に厄介だ。」
残るは寝汚い…もとい、ふわふわの田口だ。あいつはどこででも寝る。この前もどういう経緯か分からないが、二つある棚の隙間で埃まみれの寝姿で発見された。見つけられたのはひとえに速水の『行灯センサー』のおかげと言えよう。
机や棚の陰、ソファのクッションの隙間など、ひと通り捜索するがなかなか見当たらない。念のため書類の間や棚に並べてある本の間も覗くがいない。
速水は疲れも忘れて(当然モニターチェックは忘れないが)あれこれと持ち上げては覗き込む。
ふとチビ達の即席ベッドの脇のタオルに目が行った。あれはベッドのクッション代わりで洗い立て。2枚あるが上の1枚が丸くシワになっている。
「…お前は寝心地の良いとこを見つけるのが上手いよ。」
苦笑しながらタオルをめくると…いた。暢気な顔ですやすやと、上手にタオルをまとめて眠っている。
「何だか小動物が巣作ったみたいだな。」
速水が寝顔をつん指先で突いてもまったく動じない。これはこれで可愛い姿なので、この田口だけはそのままにしてやった。
どの田口も速水は愛おしい。
顔さえ見れば疲れなんて忘れてしまう、世の中で一番大事な存在。大きくても小さくてもそんなことは些末な問題だ。彼の存在自体が癒しそのもの…。
―――愛してるよ。おやすみ…良い夢を。
巣作ったチビ行灯は私もナマで見てみたい。…そんな妄想の果てのお話。