深夜のコンビニ事情
「えーと、コレとコレと…」
「あ、これ美味しいよな。」
「速水、ビール取って。」
久し振りに二人並んで病院を出ると、まずは今夜の酒と肴の調達でコンビニに立ち寄った。
最近は二人とも病院泊まりの多かったので、家には何もない。
「お、ついでにチュッパと…」
「お前、またかよ。最近消費が早くないか?」
「しょうがない。お前に会えないから口寂しいんだ。」
「っ!バカ、そういう事、外で言うな!」
田口は小声で文句を言い、速水から離れた。
「こんなもんかな。」
田口が会計に行こうとすると、速水がすっと近寄って小箱をカゴにポイと入れた。
「…お前なぁ……」
田口は呆れた顔で速水を見た。速水が持って来たのは、男性用避妊ゴム製品。
「無いと困るのはお前だぞ?」
「男二人の買い物でコレを買ったら疑われるぞ。」
「でも事実…ぃてっ!!」
速水は思いきり足を踏んづけられた。
―――確かに無いと困るモノではある。しかし、今買わなくたっていいじゃないか。
そう思いながらも仕方なくそのまま会計してもらう。店員が男性だったのが救いだ。
「お会計、2020円です。」
田口が財布を覗くと、生憎小銭を切らしてた。千円札はあるが、あとは万札。
さて、どうするか。
20円足りないだけで、深夜のコンビニで万札を出すのは申し訳ない気がする。
「……すいません。これ、抜いて下さい。」
結局商品を減らしてもらって買い物を済ませた。
「あれ?チュッパが足りない。」
「小銭が無かったから抜いてもらった。」
「ふうん……」
速水がニヤニヤしながら田口の顔を覗き込む。
「何だよ、気味悪いな。」
「だってさ…止めるのコレじゃなくてよかったのか?」
買い物袋から抜き出したのは、例のゴム製品。田口は言葉に詰まって早足で先に行ってしまった。
速水は上機嫌だ。
「行灯もヤル気満々みたいだし…今夜は頑張っちゃうとするかw」