忍者ブログ
AdminWriteComment
愚痴外来の将軍×行灯推奨のSSブログです。たまに世良×渡海や天ジュノも登場。
No.
2025/07/06 (Sun) 20:23:45

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

No.372
2013/06/13 (Thu) 15:48:26

ずーーーーっと考えていたネタがやっと形になりました。
何年かまえに書いた世良渡海の義兄弟パラレルです。何だか渡海先生、子犬の世話を焼くみたいな話(笑)。
自分的には好きなシチュなんですよね。

興味のある方は続きからどうぞ。
因みに最初のパラレルはこちらからどうぞ。

雑貨やデザインの祭典デザインフェスタに申し込んでみました。
参加は抽選なので、出られるかわかりませんが。
もちろん腐心も忘れてませんよー。ほもも好きー。

拍手[0回]


家族の肖像(世良渡海・義兄弟パラ)


血の繋がりが無いと分かって告白をして…。
その後も世良は何度も好きだと繰り返し、渡海は笑って受け流す。そんな日々を送っていた。

「あれ?何ですか、それ。」
渡海が帰って来るなりリビングのテーブルに封筒を投げた。A4より少し大きめで、投げ出された衝撃で中身が半分くらい飛び出した。何か立派な装丁でアルバムみたいだった。
「見てもいいですか?」
「…勝手にしろ。」
渡海はいたくご機嫌斜めだ。放り出したモノに見向きもせずリビングを通り抜け、キッチンの冷蔵庫から缶ビールを取り出して戻って来た。
世良が封筒からそれを取り出して開いてみると、美しく着飾った和服の女性が楚々と笑っていた。
「これって…お見合い、写真?」
「それ以外の何に見える。」
写真の女性とは真逆に、渡海は苦々しい顔でビールを煽った。
「どうしたんです、これ?」
「佐伯のジジイに押しつけられた。」
佐伯とは渡海が所属する学部の長で、次期学長は確実だろうと言う有力者だ。そんな立派な人をジジイ扱いするとは…渡海の傍若無人に世良はいつもヒヤヒヤしっぱなしだ。
「あの…ジジイって……」
「ふん、ジジイをジジイと呼んで何が悪い。あっちだって俺がそう呼んでる事くらいお見通しさ。」
「そう…なんですか?」
ますます心臓に悪い話だ。そんな気持ちが表情で丸わかりしてしまったようで、渡海は苦笑しながら付け加えてやった。
「佐伯のじいさんと親父は旧知の仲だった。俺も小さい頃からよく知ってるんだよ。家にも来た事あるしな。」
「へぇ…」
意外な関係を知って世良は驚くと同時に今までの無礼な物言いに少しだけ胸をなで下ろしたが、渡海は穏やかでない。
「だからって昔なじみを良い事に、こんな下らねぇ話を持って来やがった。」
あっと言う間にビールを飲み干して、缶をぐしゃりと片手で潰した。眉間にはいつもより三割増しのシワが寄っている。
どうやら三十過ぎてもふらふらしている、亡くなった親友の息子の心配をしているらしい。本人にとっては余計なお世話らしいが、きちんと写真を持って帰って来るあたりそれなりに気を使っているのだろう。そういうあまり気付かれない優しさが渡海にはあり、世良はそれが好きだった。

「で、先生はこのお話…受けるんですか?」
「…さて、どうしたもんか。」
「えっ!考える余地があるんですか?」
すっぱり断ると思っていたので世良は渡海の返事に驚いた。
「何だ、受けたらまずいのか?」
「あ、いえ…迷惑そうにしてたからてっきり……」
「ガキには解らねぇしがらみがあるんだよ、いろいろな。だから面倒で嫌なんだ。」
渡海はもう一本ビールを調達してそのまま自室へと向かってしまった。世良は一人残されたリビングでもう一度見合い写真と一緒に入っていた釣書を見た。どうやらこの女性は別大学の教授のお嬢さんらしい。
そう言えば…世良が取っている講座の先生でも奥さんが恩師の娘だとか教授の紹介とか言う人もいた。そうやって教授間での派閥や人脈が広がっていくのかと学生の世良は漠然と考えていた。
―――別大学の関係だから、あまり派閥とかは関係なさそうだよな。
きっと本当の息子のように思っているのかもしれない。
渡海の気質は一匹狼で、派閥など徒党を組むタイプではない。それをおもんばかってあまり関係のなさそうな所から縁談を引っ張って来たのだろう。


―――結婚…か。
別にそれ自体おかしな話ではない。渡海だって結婚して子供がいたっておかしくない年齢だ。しかし彼が家庭に収まるなんて想像が出来なかった。
いや、したくないのかもしれない。ずっと二人で暮らせればいいのにと子供じみた考えがよぎる。
でももし渡海が結婚したら…そう考えると背筋に寒気が走る。このまま二人で、なんて世良の都合のいい話でしかないし、それこそ渡海を縛り付けておく権利など欠片もないのだから。
このお見合いだって苦々しく思いながらも、意外と義理堅い彼は受けるかもしれない。
世良は写真を握る手に知らずと力が入っていた。


「おい、世良。何考えてるんだよ?」
学食で友人達に小突かれるくらい世良は渡海の見合い話の事で頭がいっぱいだった。
「何か悩んでんのか?あんまり飯が進んでないぞ。」
「あ、ごめん…」
「好きな女でも出来たのかよ?」
「そっ、そんなんじゃないよ!」
「何だよ慌てて。変な奴だな。」
まさか好きな『男』に見合い話が来てるなんて言えるわけがない。話に収まりがつかないので、話せる部分だけ掻い摘んで話した。
渡海と暮らしている事は、関係を説明するのがややこしいので誰にも言っていない。なので、今一緒に暮らしている親戚の兄代わりの人が結婚するかもしれないとだけ話した。
「で、お前は新婚のおじゃま虫になると悩んでる訳か。」
「そりゃお前が出るべきだよな。実家は遠いのか?」
「あ、俺はもう両親いないから…」
「あ…悪い。ごめん。」
事情を知らなかった友人は申し訳なさそうに頭を下げたが、世良は気にするなと笑って答えた。
「ま、もし今の家を出る事になったら俺に言えよ。俺ん家は不動産屋だから学生向けの格安物件紹介するぜ。」
「あ、ああ。もしもの時は頼むよ。」
と曖昧な返事をしておいた。

渡海の見合い話を思うと最近は寝不足で、何だか頭の回転が悪い。特にこの日は昼過ぎからは身体がだるくて講義中もうつらうつらしていた。授業が終わると世良は友人からの誘いを生返事で断り帰路に着いた。
―――参ったなぁ。まるで…恋わずらいだ。
そう思ったら、急に顔がかっと熱くなった。女子高生みたいな発想が思い切り恥ずかしくなり、真っ赤になったであろう顔を誰にも見られたくなくて顔を伏せて家までの道のりを駆けだした。
家に着くと珍しく渡海が先に帰っていた。そういえば今日は午後の講義は無いと言っていた。
「よう、おかえり世良ちゃん。」
「あ、ただい…」
―――あ、れ?先生の顔がぶれて見える?
「世良ちゃん?」
言葉尻が消えた世良を、渡海が不審そうにのぞき込んだ。
―――先生、何か怖い顔して
世良が不思議に思って一歩踏みだそうとした瞬間、膝の力が抜けてそのまま崩れ落ちた。
その時、遠くで渡海の叫び声を聞いた気がしたが、世良はそのまま意識を手放した。

「ったく…馬鹿は風邪引かねぇんじゃないのか?しかしどうしたって賢いとはとても思えねぇな。」
渡海はぶつぶつ言いながらベッドに放り込んだ世良を見下ろしていた。当のの本人は高熱でぼーっとしている。
世良が帰って来てリビングに入って来た時、顔が異常に火照っているのがすぐに分かった。ついでに視点も合っていなかったが、本人は気付いていないようだった。
渡海が声を掛けた時そのまま倒れ込んだのにはさすがに焦った。床に転がる寸前で抱き止めたが、その身体はやはり熱くかなりの高熱と知れた。
「世良ちゃん?!」
返事が無く、意識を失ったと思った。
渡海はすぐに車を出し、総合病院へと世良をかつぎ込んだ。
診断結果は風邪。意識を失ったと思ったのは普段の寝不足が祟って、身体が眠りを欲していただけだった。
つまりは電池切れの熟睡モードだったのだ。
しかし風邪とはいえ結構な高熱なので要安静を言い渡されて帰って来たのだった。

「何でこんなんなるまで気付かないかね?馬鹿にもほどがあるぜ。」
「……ご‥めんな、さい…」
世良が申し訳なさそうに、そして苦しそうに謝れば渡海も溜め息を吐きながら「仕方ねぇなぁ」と髪を乱暴に掻いた。
「で、お前は寝不足になるほど何を悩んでるんだ?」
「…え……」
「一緒に暮らしてて分からないほど俺は鈍感じゃないぜ。」
「……。」
「…ま、言いたくなけりゃ」
「…先生が‥結婚したら……俺…」
世良が天井を見つめたままぽつりと呟いた。
「俺、先生のこと好きなのに…でもどうにも出来なくて。俺は男だし、先生も男だし……でも一緒に、ずっと一緒にいたくて……」
熱に浮かされたように呟く世良を見て、渡海は再度溜め息を吐いた。
「…分かったよ、世良ちゃん。分かったからもう寝ろ。」
「先生、俺は」
尚も続けようとする世良の枕元に渡海は膝を付き、顔を寄せた。
「お前はそんな心配しなくていいから…いい子だから寝な。」
そう囁くと寝乱れた世良の髪をそっとひと撫でして微笑んだ。それは今までに見たことがないくらい優しくて、世良は驚くと同時に何だかひどく安心してしまった。
―――先生の笑顔ひとつでこんな気持ちになるなんて…こんなに好きだなんて…。
「…好き、です……せ、んせ……」
安心した世良はまた電池が切れたように眠りに落ちた。

「…ったく、いつまでもガキで困ったもんだ。」
そう言いながら渡海は呆れたような笑いをこぼすが、それは決して嫌な気持ちではなかった。むしろ甘酸っぱくてこそばゆいような感覚だ。
「…参ったね。」
渡海は眠る世良を見下ろしながら苦笑した。


世良の風邪が全快して、しばらくしたある日の休日。
家に突然の訪問者が現れた。
「さ、佐伯教授!」
玄関で出迎えた世良は雲の上の人ともいえる人の登場に面食らった。が、それは佐伯も同じだった。
「…君は誰かね?」
知らない者に名前を呼ばれれば不審に思うのは当たり前だ。しかもここは旧知の家だ。
「あ、俺…じゃない僕は…」
世良は慌てて自分の名前と学年学部を名乗った。
「何故学生の君が渡海の家にいるのかな?その様子だと遊びに来ている様ではないらしい。」
「そ、それは…」
どこから話せば良いのか混乱したところで、不機嫌そうな声が掛かった。
「おい、世良ちゃん。いつまでも玄関先で立ち話してんじゃねぇよ。」
「渡海先生!」
「おい、この学生は何なんだ?」
佐伯の困惑はもっともなので、渡海も仕方なく恐ろしく端的に答えた。
「親父の知り合いの息子だ。こいつの両親が死んだから親父が引き取った。」
かなり端折ってはいるが大筋は正しい。佐伯も「そうか、まあいい。」と細かいことは聞かずにその場は納得した。と言うかそれよりも大事な用件があるらしい。
―――きっとお見合いの件だ。
世良の顔が強ばった。

「見合いはする気になったか?」
出された茶に口を付け、佐伯は切り出した。世良は遠慮するよう言われてここにはいない。
「ふん、冗談じゃない。何であんたにそんなこと指示されなきゃいけないんだ。」
渡海は盛大に煙草をふかし、傍らにあった見合い写真をずいと佐伯に押し返した。
「大体、こんなお嬢様が俺みたいなすれっ枯らしと暮らせると思ってんのか?一緒になる前から破綻するなんて分かりきった事させんな。」
渡海は不機嫌を隠そうともせずに吸い終わった煙草を灰皿に乱暴に押しつけた。佐伯も一つ溜め息をついたが、想定内の事だったらしく黙って写真を手元に寄せた。
「まったく…お前と言う奴は……」
子供の頃から知っているだけに、手に負えないとは分かっていても何かしら面倒を見たいと言うのが佐伯の正直な気持ちだ。
「何だ、じゃあこのお嬢さんはヘビースモーカーで大酒飲みで夜遊び女遊びを全部飲み込めるほど出来た女なのかい?それとも写真とは裏腹に俺も驚くほどのあばずれなのか?それならちょっとは考えてやってもいいぜ。」
そんな事は絶対にあり得ないと読んで、渡海は佐伯の未練を鼻先で笑った。
佐伯はこれ以上は無理だとして話を切り上げた。

「ところでさっきの学生だが…」
「ああ、世良ちゃんの事か?」
渡海の目がふとやわらかくなるのを佐伯は訝しげに見た。
「一体どういうことなんだ?彼がここに来たのはどれくらい前の話なんだ?」
「一緒に住んでかれこれ四年くらいかね。別にあんたに報告の義務は無いだろうが…」
とまで言ったが、後々面倒なので大まかな説明をする。
「なんでもあいつの父親ってのが親父の恩人なんだとさ。どんな恩人かは知らないぜ。で、その人は早くに亡くなってて、親父は残された女房の相談に乗りながら、母子を見守ってたらしい。」
「…あいつらしい。」
故人となった旧友の義理堅さを佐伯は思い出していた。
「で、あいつが高校生になってしばらくして今度は母親が亡くなった。で、まだ未成年のあいつをウチに連れてきた訳さ。」
「…まったく知らなかったな。あいつの葬儀の時も会わなかった。」
「それは俺の一存で表に出さなかった。いちいち説明が面倒だし、隠し子だ何だとデマを飛ばされても困るからな。」
渡海は小さく笑いながら遠い目をした。
「親父にさ頼まれたんだよ。あいつが一人前になるまで面倒見てやってくれって。」
「……。」
「とりあえずまだ学生だしな。」
「社会人になったら外に出すのか?」
「一人前に自分の稼ぎで飯が食えるようになったらな。」
「…ずいぶんと先の話だ。」
佐伯は呆れながらも、義理堅いのは親子で似るものだと思った。息子の方はかなりひねくれた物言いだが。
それでも世良の事を語る時の優しさを含んだ眼差しと口調は、佐伯にはとても意外だった。父親に押しつけられた面倒なはずなのに、楽しんでいるようにも思える。
「ずいぶんとあの子を気に入ってるな。」
「はは、子犬の成長を見てるみたいで可愛いもんだ。」
佐伯は表情にこそ出さないが、今度こそ驚いた。この男の口から『可愛い』なんて言葉が聞けるとは…。しかも見合い話の時とはうって変わって、かなりの上機嫌だ。
「でも大学で世良ちゃんの事は言うなよ。あいつも俺も説明が面倒だから誰にも言ってないんだからな。」
渡海の言葉に佐伯ももっともだ思い頷いた。


帰りがけに佐伯はふと思いついた事を口にした。
「お前…まさかとは思うが、あの子の事があるから見合いを断ったのか?」
玄関先で突然問われて渡海は少しだけ目を見開いた。が、すぐに低く笑った。
「そんな馬鹿な。人にあれこれお膳立てされるのが気に入らないだけさ。だから二度とこんな話は持って来んな。」
佐伯は何度目か分からない溜め息を残して去って行った。

渡海は閉まった扉を見つめながら思う。
見合い話なんてまったく気に入らない。自分の隣に置きたい者くらい自分で選ぶ。それが今は…あの世良だと言うこと。今まで感じた事のない、二人でいる時の満ち足りた気分がたまらなく心地よい。自分を求めて来る様が本当に忠犬のようで思わず構いたくなる。
「そろそろご褒美をやってもいい頃かねぇ。」
とこぼすと
「ご褒美って…何かありましたか?」
と後ろから唐突に世良が声をかけて来た。
「…世良ちゃん、盗み聞きとは感心出来ねぇな。」
「ち、違いますよ!たまたま通りかかったら聞こえたんです!」
「それなら聞き流せ。」
「そんな…不思議に思ったから聞いただけじゃないですか。」
「とにかくご褒美は無しだな。」
「え!俺のだったんですか?!何くれるんです?!」
「やらないんだから聞かない方がいいだろ?」
「えー、そんなぁ…」
奥へ戻る渡海の後を、まさに子犬のように声を上げながら着いて行く世良。

―――こんな風なのも良いもんだな。
渡海は世良に背を向けながら楽しげに笑っていた。



おしまい

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[377]  [376]  [375]  [374]  [373]  [372]  [371]  [370]  [369]  [368]  [367
カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
みさき
性別:
女性
自己紹介:
首都圏に棲む主腐…もとい主婦。家庭内における肩身の狭い『隠れ同人』。
カウンター
NEXTキリ番:45678
キリ番、受け付けます!
ブログ内検索
バーコード
アクセス解析
忍者ブログ [PR]